第7回「日本人学校に通わせるための条件とは」

 タイの日本人学校は実は名門校でもある。いまやタイ東部の港町シーラチャーにも分校ができるなど、生徒数は3000人規模と言われ、世界的に見ても一番大きい日本人学校になる。なにしろ、運動会は50メートル走において前の走者がゴールしないうちに次がスタートしないと終わらないくらいなのだとか。そんな日本人学校に、駐在員としてではなく、たとえば『タイランド・エリート』を利用して移住した人が、子どもたちを通わせるにはどうしたらいいのかを見ていこう。

日本人学校入学は移住者には難しい?

 日本人学校の入学条件に関しては様々な噂があって、正確なところが掴みにくい。日本人学校は私立校なので、転校というシステムはなく、入学か編入になる。引っ越しする場合は退学という扱いだ。また、海外なので、情勢によっても入学条件は変わってくる。だから、あくまでもこの記事の情報は参照に過ぎないので注意してほしい。

 入学の条件や手続きは大きく分けると、国際結婚世帯、特別な支援が必要な児童の場合、それ以外の3タイプで異なる。いずれにも共通しているのは、子どもが学業についていけるだけの日本語を話せること。さらに、親も日本語で連絡ができる・理解ができる語彙力が必要とされる。そのため、タイ人との国際結婚で生まれたハーフの子息に関しては入学条件がクリアできない可能性が出てくる。

 日系企業駐在員の子どものほとんどが入学するので、バンコクの日本人学校はとにかくマンモス校である。日本国内は都会も田舎も子どもがどんどん減ってクラスも少なくなっているのに、バンコクは逆に増えている。全校で約3000人も生徒がいるので、1学年あたり330人はいるということになる。

これだけ生徒が多ければ、教師たちの仕事も増える。そうなると、いちいち特定の保護者にだけタイ語だの英語で特別扱いするわけにはいかない。だから、日本語ができることが条件になるのだろう。

 そんな日本人学校は今現在はラマ9世通りにある。地理的に言えば、日本人が多いスクムビット通りから見ると北にある。バンコクの日本人学校は1926年創立の「盤谷日本尋常小学校」を前身にしている。当初は今のBTSプルンチット駅に近かった。このころは生徒数も少なかったし、尋常小学校時代の卒業生には浅丘ルリ子もいたりする。ここから1960年にラマ9世通りに移った。そして、1974年に「泰日協会学校」としてタイ政府に認可される。その後生徒数が増え、日本人駐在員が多いシーラチャーに2009年、分校が誕生した。

学費は日本の公立校よりもずっと高い

 日本人学校に通わせるには当然ながら学費がかかる。日本の公立校ならそれほどかからないが、日本国外にある日本人学校は私立校でもあるので学費が高い。物価指数や為替レートで変動する可能性もあるが、だいたい1学期で6万バーツかかる。日本円でおよそ21万円だ。ほかに入学金(新規で入学する場合)に16万バーツ(約56万円)などもかかってくる。とすると、初年度は16万+6万が2期分+3学期の3万バーツがかかり、およそ31万バーツ、すなわち100万円を超える費用を捻出しなければならない。

 また、日本人学校は住まいからやや遠いので歩いていける距離ではない。そのため、学校では送迎のスクールバスを用意している。自前で車を用意して送り迎えも可能だが、普通はバスに乗せる。正確にはバスは外注なので、これに乗せるとバス会社に対して月々2万~3万バーツがかかる。10万円くらいということになる。

 私立のインターナショナル校と同等なので、日本人学校とはいえ学費がとにかく高い。日系企業駐在員ならこの費用は会社負担であるケースが大半なので、むしろ積極的に日本人学校を選択する世帯が多いだろう。一方、自ら望んで来た長期滞在者・移住者の場合は確実に全額負担になるので、収入によっては家計にかなり重くのしかかってくる。ほかにも学用品や習い事など諸々にお金がかかるのは言うまでもない。

 ちなみに、日本人学校に入学できる年齢以下の場合は幼稚園に通うことになる。昔は日本人学校にも幼稚園があったのだが廃止になったので、自分で探さなければならない。とはいえ、バンコクなら幼稚園はタイ人向け、英語教育、日本人向けのところがあり、小学校よりは門扉は広く開けられている。

ただ、将来的に日本人学校に入れたいとなったら、幼稚園も日本人向けのところにして日本語に慣れさせておかないと授業についていけなくなる可能性もあるので注意したい。日本人向けの幼稚園の場合、学費はやはり学期あたり数万バーツは見た方がいい。タイ人の幼稚園は数千バーツと考えるとかなり高いと感じるだろう。しかも、タイは前期と後期の2期制なのでよりかかる学費は安いということになる。

バンコク日本人学校に通わせるメリット・デメリットとは

 日本人学校に通わせるメリットは、タイにいながらにして日本の教育を受けさせることができる点に尽きる。タイにある日系企業は生産拠点として規模が大きい。そのため、駐在員は優秀な人が派遣されるので、自ずとわが子に与える教育に対しても熱心な世帯が多い傾向にある。さらに、日本人学校は日本から志願してきた教師が来る。赴任に際して任地は選べないので、覚悟を決めた教師が多いと言われる。

長期滞在を自ら選択した人の子も、そのバイタリティーを受け継いだ子なのだから、きっと優秀だ。そんな子どもたち、それをまとめる教師が集まってくるので、自ずと教育水準が上がる。そのため、少なくともバンコク校は高い学費を払ってもそれなりのメリットがある。

 一方でデメリットもある。メリットの大きさと比較して目をつぶれるものもあれば、そうでないものもある。まず、いい意味でも悪い意味でも日本人学校は日本人の学校であるという点だ。闇の部分を晒すとすれば、いじめも少なからずある。それから、誰もが避けては通れないデメリットに進学の問題がある。

 日本人学校は中等部までしかないため、それ以上の子どもは進学を考えなければならない。日本では当たり前のことではあるが、タイの学校からどこに進学するのか、という話になる。選択オプションとしては、欧米系のインター校に進学する、バンコクにある日本の高校に進学する、日本国内で進学する、第3国に留学させる、の4つが存在する。

 インター編入や外国に留学する場合、英語のレベルを問われる。カリキュラムも当然違うので、日本の教育で得た知識や英語力がどこまで活かせるか。そう考えると、日本人学校ではなく、最初からインターに進学させていた方が先々で断然有利だ。

 バンコクにひとつだけ日本の高校が分校を持っているようだ。ここに進学するという手もある。ただ、このあと大学をどうするかという問題も出てくるので、結局は問題の先送りでしかないとも言われる。残念ながら日本人学校の教育クオリティーと比してこの高校はそこまでは優秀ではないとも言われ、昔からこの学校に進学する子どもは少ないようだ。

日本人学校卒業後は日本に進学が一般的

 日本人学校卒業後は日本で進学する方法が一番ポピュラーと言われる。駐在員はいずれ日本に帰るのだから、それで問題ない。しかし、自ら移住した世帯はこの年齢で家族がバラバラになってしまうことになる。だから、日本での進学も安易に思わず、慎重に考えたいところだ。

 現実的に日本人学校を卒業した人の大半は日本国内で進学する。日本人学校のサポートも手厚いので、高校受験はわりと有利に進められるようだ。しかも、日本人学校卒なので、日本において帰国子女枠も利用できる。

 先述の通り、日本人学校は教育レベルが高い。しかも、帰国子女枠が使える。そのため、早稲田、慶応といった有名大学の付属高校に進学する子どもも多い。その先には東大に行く人もいる。駐在員は選ばれて来た人かもしれないが、日本人学校の生徒はたまたま集まったに過ぎない。そう考えると、日本国内の公立校と比べても生徒の集まり方の偏りはそれほど変わらないはず。しかし、日本人学校に通うと学習レベルが著しく向上し、東大も夢ではなくなってしまうようだ。

 日本人学校、特にバンコクの日本人学校は優秀だ。しかし、一方で、駐在員ではない長期滞在者、もしくは移住者にとっては子どもがある程度の年齢になると手放すのか(たとえば日本の寮制の学校に進学させるか、祖父母に預けて学校に行かせるかなど)、手元に置くにはどうすればいいのか、をよく考えなければならない。

 そういう意味では移住というのはやはり日本で生活しているのとは大きく違うことと改めて感じる。しかし、それを含めて「移住はおもしろい」とも言える。単身よりも家族連れはより考えなければならないことが多い。そういった諸々の負担は減らせるなら減らしておきたい。その中ではまずただ居住するだけで降りかかってくるビザという問題を解消するため、タイランド・エリートでの移住はマストなのかなと思う。

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