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第5回目 コロナの恐慌対策など問題山積みなのに移住者が増えるワケ

 今回の連載の最後にタイになぜ日本人移住者が増加し続けるのかを、在住20年の目線から考えていきたい。タイにある魅力とはなんなのか。また、あまり語られることのない、タイ移住に向かない人の特徴を紹介したい。たとえば連載中に何度も言及している『タイランド・エリート』は高額ながらメリットは大きいものの、自分にそもそもタイの生活が合わなかったらどうするのかという心配もある。そんな悩みの解決になればと思う。

タイは食べものがおいしい

 世界中を旅して周ったほどではないが、いくつかもうこりごりだと思った国と、タイやベトナムなど何度でも行きたい、暮らしたいと思った国の大きな違いがわかってきた。それは、「食事がおいしくない国は思い出にならない」ということだ。

 極端にいえば、窃盗に遭う、ホテルの予約は取れていない、街中が不衛生だったとしても、食事が抜群においしければきっとまた行きたいと思う。一方、すべてがパーフェクトだったのに、どこで食事をしてもおいしくなかったら、もう2度とその国には行かない。それくらい食事は大切だと思う。

 その点ではタイは完全に合格点が出る国だ。まず、タイ料理がおいしい。毎日食べ続けるには体がもたないが、まずいという店はほとんどない。

それに和食も今は日本とほぼ同じ味を出す店が増えたし、フレンチやイタリアンも同じ水準の料理を日本で食べたらこの値段では済まないのではないかというくらいおいしい。さらにいえば、バンコクにはアフリカや中東の料理店も多くあり、東京にも負けない食のバリエーションがある。

 まずこの点が大きなメリットだと思う。日本人は食べることが好きな人が多い。だから、なおのことタイの食環境のよさは特筆すべきものがある。

タイ人気質が魅力でもありデメリット

 タイ人の気質も日本人だけでなく世界中の人を惹きつける。おおらかで、南国人らしくいつも楽観的で、楽しそうな雰囲気といえばいいのだろうか、ノリのよさもまた観光で来た人には魅力的に映るのではないか。

 ところが、このタイ人気質が逆にタイ長期滞在ができない人の性格を浮き彫りにさせる。

たとえば、このおおらかな気質の中には時間のルーズさがある。誤解されがちだが、タイの軍隊や企業はしっかり時間で動いているので、タイ人が全般的に時間にルーズというわけではない。あくまでも「急がなくていいところでは急がない」というだけのことだ。死ぬわけではないのだから、そこまで時間にきっちりする必要があるのかということは確かにわかる。

この部分を理解できるかできないかが、まずタイに長期滞在できるかできないかの分かれ目なのかなとボクは思う。時間におおらかとうことは、なにに関してもおおらかだ。英単語が2個3個しかわからなくても、タイ人は「英語を話せる」と豪語すると前の回で書いた。これもおおらかさのひとつだ。外国人の中にはこれを「いい加減」と受け取る人もいるだろう。

 ただ、このいい加減さは旅行のときにはタイの魅力に映る。日本では考えられない言い草なので、おもしろいと感じるからだ。タクシーも道を知らない、乗車拒否をする、小額のボッタクリをする。こういうのが旅行時は楽しい。思い出話にもなるので、むしろ得したと思うかもしれない。

 しかし、暮らしてみてこれが日常茶飯事となると話が変わってくる。強いストレスに感じてくるだろう。この部分を許せないと毎日イライラすることになるので、だんだんとタイがまるごと嫌になってきてしまう。

 このイライラが頂点に達するのが、居住に慣れ始めただいたい3ヶ月くらいだ。ボクの知り合いでタイが好きで仕方がなかったけれども、どうしても合わないといって撤退した人が2人いるが、両人とも3ヶ月目だった。タイ人気質は魅力でもあるが、近くで見ているとだんだん見え方が変わってくる。それがちょうど3ヶ月目に訪れるのだろう。

ただ、タイ人の肩を持つと、タイ人は旅行者と長期滞在者の前で自身を演じ分けているわけではないということは憶えておきたい。つまり、タイ人の見え方が変わったのは、タイとの向き合い方が長期滞在で変化した自分の目線が問題なのだ。

 タイは旅行時と長期滞在では見えてくる顔が違う。そのあたりを乗り越えられない人はタイの長期滞在はほぼ不可能といえる。まあ、それはタイに限らず、どの国でもそうなのだけれども。移住や長期滞在は自分のマインドを旅行者から生活者に変えることが最初の一歩なのかもしれない。

タイランド・エリートは転売ができる

 誰しもタイに移住したい、長期滞在したいという夢は己の心の奥から来るパッションだ。企業駐在員など命令されて来る人たちとはまた違う。そんな情熱をもってしても、やはり現実とのはざまに苦しむ人はいる。むしろ、その現実に直面する人がほとんどで、それを乗り越えてきたからこそ、10年20年と暮らしていける。

 では、その情熱と現実をどう折り合いつけるか。その方法はただひとつだとボクは思っている。それは、とにかく移住することだ。ただ、合うか合わないかがわからないわけなので、まずは3ヶ月だけ、あるいは半年だけなど期間限定もしくは目標設定にするといい。

このときに最初から仕事があるなら就労ビザを取得すればいい。もしなにも当てがないなら、今後の長きをタイで過ごすことを考慮して、タイ語学校に通うのはどうだろう。学校によっては就学ビザを取得できる。ただ、不良外国人の悪用で就学ビザもちょっと厳しくなっているようではあるが。いずれにしても、タイ語を学ぶことでタイ人とタイ文化の理解に繋がるので、長期滞在にタイ語習得は有利だと思う。

 金銭的に余裕がある人は『タイランド・エリート』の取得もいい。滞在許可がちゃんとあるということは安心感がある。この安心がないと腰を落ち着けることもできない。また、それなりに高額を投入しているので、タイと向き合うマインドも変わるのではないか。

 それから、タイランド・エリートの大きなメリットは特典の数々だ。銀行口座開設サポートなど実生活に必要なものを得られるし、ゴルフやボクシングジム、料理教室など、いろいろなアクティビティを利用できる。タイはおおらかなので、自分をしっかり持っていないと楽な方に流されていきやすい。不健康な生活になったり、危ない話だと麻薬や犯罪に手を出す人もいなくはない。また、在住日本人が多いのはメリットだが、一方で人間関係のストレスも出てくる。そんなときに運動や趣味は大切な逃げ場になる。タイランド・エリートならそれが安くできるようになるのだから、心の健康も保てる。

 しかし、万が一自分がタイに合わなかったらどうしようという気持ちもあるだろう。タイランド・エリートという高額のサービスを利用しておいて、もしタイを好きになれなかったら。移住ではなく、これまで通り観光ベースでの渡航がいいと感じたら。

 そんなときでもタイランド・エリートは問題ない。というのは、グレードによるのだが、会員権を転売することが可能だからだ(一部のメンバーシップ)。購入額面での売却は難しいが、多少割り引いた金額で権利を手放せるので、万が一タイが合わなくても金銭的な損失はないに等しい。あるいは、旅行では毎年来たいというのであれば、保有を継続するのもひとつの手だ。

 タイは魅力のある国だ。もちろんすべてをいいとは言い切りたくはない。タイにも闇の部分は存在するし、不便や理不尽も少なくない。でも、それはどの国も同じ。ないものねだりをするのではなく、今目の前にあるいいことを数える。そうすることで、タイ移住もよりよいものになると思う。

 第1回目で書いたが、移住で一番ネックになるのがビザだ。ボクのようにタイを知っていて、タイ語もでき、かつ配偶者がタイ人であれば配偶者ビザでもいい。しかし、普通に考えればタイ人との結婚そのものが困難だ。そうなると、独身あるいはタイ人以外の方と結婚されている人がタイに移住する場合、なんだかんだで手っ取り早いのはタイランド・エリートになる。最近話題になっているので、配偶者ビザのボクからしても興味深いくらいだ。

執筆者紹介

高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。

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