第2回目「タイ移住にかかるコストはどれくらい?」

 日本のバラエティー番組などではいまだにタイの物価が安く、低コストで豪邸に暮らせるというようなことを前提に企画が進んでいることがある。はっきりいって、今やそんな時代ではなくなっている。タイも物価が上がっていて、正直に書けば、生活コストは日本よりもかかるのが現実だ。連載2回目の今回はタイ移住にどれくらい予算を見た方がいいのかを、実際に住んでいるボクが目の当たりにしているリアルから紐解いていきたい。

屋台での食費でも3万円はかかる

 生活コストを下げたいからタイに移住するというのであれば、その考えはまず改めるべきだ。日本人がタイに移住した場合、生活費は日本よりかかると思った方がいい。ただし、あくまでも「思った方がいい」ということではある。つまり、安く暮らそうと思えば暮らせなくもない。

 前提として、タイ人の平均所得は日本人のそれよりもずっと低い。イメージとしては全体平均が2.5万バーツくらい。9万円に満たないくらいか。これはあくまでも平均で、タイは極度な格差社会なので、実際に平均以上を稼いでいる国民は全体の15%にも満たないといわれている。そういう人たちが日本よりも高い生活費を払うことは不可能だ。

 つまり、日本よりも安く暮らす場合、タイの中流階層以下の生活をすれば可能だということになる。毎日屋台のタイ料理を食べ、タイ人が暮らすようなエアコンもないアパートで暮らす。当然、住まいは郊外になるので周囲に日本人はいないだろう。言葉も英語だって通じないので、タイ語を話せないといけない。それで過ごせますか、ということになる。

「タイ料理は好きだから大丈夫!」と多くの人が答える。しかし、タイ料理は味が濃く、脂っこいものが多い。日本人の体質には元々合っていないので、毎日タイ料理というのはかなり無理がある。実際にタイ料理だけで過ごせる人はまずいないと思った方がいい。

 たまに和食ということで、ほかの日は毎日屋台ということでもいい。しかし、近年はタイ料理も値上がりしていて、屋台でも一皿料理が50バーツ(約175円)もする。この10年で2倍くらい高くなった。一皿50バーツで、飲みものも買うとなれば、1食は安く見ても80バーツくらいになる。夜はもうちょっとかかるので、3食食べるとすると80+80+100として260バーツ、1日約900円だ。

 月に1回和食を入れるとする。和食は日本よりも高いので、軽く居酒屋で飲んだとしても1000バーツ、約3500円はかかる。そうすると、食費だけでひとり頭3万円/月はかかることになってしまう。これを週1にしたらもっとかかってしまうわけで、屋台の食費ですら全然安くない。

住まいは都心がおすすめの理由

 自炊を考える人もいるでしょう。ところが、タイの安いアパートには台所がない。簡易的なキッチンがつく住まいは、バンコクだと賃料が月1.5万バーツ以上のコンドミニアム(分譲マンション)となる。上は100万円超の高級賃貸もあるが、日本人がセキュリティー面も含めて安心して暮らせるのが3万バーツ台といったところ。3万バーツは10万円ちょっとといったレートなので、これだけ見てもタイ、特にバンコクは安く暮らせないということがわかる。

 こういったところで自炊をしたとしても、タイは暑い国なので冷蔵庫の開閉で冷気が逃げ、食材が思ったより長持ちしないため食材のロスが大きい。ボクの感覚では食べ盛りの子ども以上の人が5人以上いる世帯でないと自炊は割に合わない。

幸いタイは外食文化なので、ほかの東南アジア諸国と比較しても屋台などが多い。だから、結局のところ、食費を安く済ませたい場合は屋台しかないということになる。

 こういう高い賃貸住宅は主に都心に多い。当然郊外に行けば安い物件もあるにはある。そうすると治安の問題と、言語の不便さが出てくる。また、完全にタイ人文化のエリアになるので、タイ人の習慣をある程度知っていないとご近所トラブルにもなりかねない。移住初心者の物件選択肢としては、まず都心であることは必須条件だ。

 というわけで、日本人がタイに移住する場合、よほどタイに熟知していない限りは、しばらくコスト高で過ごす羽目になることは間違いない。とはいっても、それをデメリットとして捉えないでほしい。なぜなら、逆説的にいえば、お金さえあれば快適に過ごせるということの証拠でもあるからだ。

 バンコクの中心地は物件は高いけれども、すべての物価が高いわけではない。屋台もあるし、和食店やその他の国々の料理店も充実している。商業施設もあるし、電車が通っているので出かけやすい。よほど間違ったところに行かなければ、夜の外出もそれほど危険ではない。

ちなみにボク自身はバンコク郊外に住んでいるのだが、不良少年らの喧嘩が近くで起こったり、犯罪者が同じマンション内で逮捕されたりなど、危険が常にある。タイの郊外ではでそういった事件は日常茶飯事ではあるのだが、普通はそうめったに経験することでもない。10年15年とバンコクにいる友人らに訊いても、ボクのような経験をした人の方が少ない。なぜなら、彼らは都心に住んでいるからだ。

タイランド・エリートは特典活用でコスパアップ

 前回、ビザ問題を紹介したが、郊外に暮らすとこの点でも面倒が多い。タイはビザ更新時などでは居住エリアの管轄イミグレーションへ出頭する必要がある。バンコクは外国人が多いので混雑するものの係官は外国人慣れしている。一方、他県のイミグレーションは混雑はしない代わりに暇なので、書類のチェックも厳しく、質問も多い。ビザの更新も困難な場合も多い。

 その点で考えると、やっぱり『タイランド・エリート』は楽だ。ビザが自動で5年分もついてくるわけなので、あとは入国から1年後までに出国してしまえばいいだけだ。郊外に住んでもビザ延長の煩わしさがない。

 そもそも、タイランド・エリートにお金を出せる余裕がある人ならバンコク暮らしも問題ない。前回算出したが、20年100万バーツの会員でさえ、1日当たりは500円もかからないコストでその恩恵を受けられる。

 もっといえば、特典もすごい。たとえば空港の送迎サービスだ。空港に向かう場合、タイではタクシーをみつけるのが難しい。タクシー自体は多いが、行きたがらないからだ。逆に空港から市内へはボッタクリも少なくない。混雑する出入国審査もタイランド・エリートの専用レーンがあるし、空港と自宅間はドア・トゥー・ドア。しかも高級リムジンサービスだ。せっかくなら、空港から渋滞のしない郊外の家よりも、ちょっと混むバンコク市内の家に向かうのに利用した方がお得感が高まる。

 ほかにも特典としてゴルフ場の利用や、スパ・マッサージ、飲食店などの割引制度がある。こういうのはやっぱり都心に多い。男性の場合はスパはあまり興味はないかもしれないが、タイランド・エリートは夫婦で入るとお得な種類もあるので、こういった魅力は大きなメリットだ。

 タイは10年前20年前と比較すると年々過ごしやすくなっているし、物質的な豊かさも上がっている。一方で、生活にはかなりの費用がかかるようにもなった。そんなタイで長期滞在する場合、権利獲得のための費用が最初にかかってしまうものの、タイランド・エリートはより効率的に過ごすには今ベストな選択肢なのかもしれない。

執筆者紹介

高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。

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