第5回「これだけ気をつければタイ生活は安泰」

憧れのタイに暮らす。住めば都とは言ったもので、なんだかんだ、暮らし始めればその土地になんらかの愛着もわくことでしょう。しかし、できれば最初からベストな物件をみつけたいもの。ここではタイの物件の探しの要点をまとめたい。

地方に暮らす場合はどうすればいい?

 連載2回目でエリア情報を紹介する際にいくつか他県の情報も掲載した。外国人がバンコク以外で暮らすとなると、よほどタイに慣れている、タイ語が堪能、配偶者がタイ人というのでなければ、やや難しいと思った方がいい。仕事の関係でどうしてもその土地にいる必要があるなら別だが、基本的には大きな街に住処をみつけないと、いろいろと問題がある。

 まず、県庁所在地などの大きな街でもバンコクとは治安が違う。外国人がそもそも少ないので、目立つこともあるだろう。だから、なにかトラブルに巻き込まれる可能性がバンコクよりやや高くなる。農村などのより小さなエリアに行けばなおさらだ。タイ人配偶者がいて、その相手の地元ならばまだいいが、外国から来た変わり種はやや敬遠されることもある。

 慣れてきたときもまた危ない。ボクの知っている人はある地方都市の工場に勤め始めたのだが、中心地に会社が部屋を借りてくれるのを断り、わざわざタイ人しかいないエリアにアパートを借りてもらった。本人曰く、そういう場所が好きだからだ。そしてわずか1週間で夜に強盗に遭った。大事にはならなかったが、会社に報告すると問題になるからと隠し続け、結局自腹で中心地に部屋を借りる羽目になった。

 外国人がタイに暮らすと、人づき合いもあって夜にまったく外に出ないというわけにはいかない。出発時はいいけれども帰宅時はやはり遅くなることもあって、そのときに問題が起こることは容易に想像できる。そのあたりはバンコクと事情が異なる。

 外国人が暮らせる地方都市は、大きなところ、観光地として外国人がそもそも多いところが挙げられる。それも中心地であることがまずは条件だ。あくまでもボク個人の見解だが、下記ならある程度経験を積めば暮らせるのではないかなと思う。

■北部

チェンマイ、チェンライ、スコータイ、ピサヌローク

■東北部

ナコンラチャシマー、コンケーン、ウドンタニー

■中央部

サムットプラカン、ノンタブリー、カンチャナブリ―

■東部

チョンブリ―(中心地、パタヤ、シーラチャー)

■南部

プーケット、ラノーン、スラータニー(サムイ島)、パンガー、ハートヤイ

北部と東北部は自然豊かで、大きな街ならあまり不便はない。中央部や東部はバンコクへの往来もそれほど難しくない。中央部のサムットプラカンとノンタブリーなら電車が走っているので、そのままバンコクに来られるし、実際タイ人はそこからバンコクに通勤・通学する人も少なくない。

南部は観光地なので、物価が高めという点ではやや住みにくい。ハートヤイは南部でもかなり大きな都市だけれども、ごく稀にテロが起こることもあるので油断できない。それでも、暮らしやすさはあると思う。

とにかくタイ移住にはここを気をつける

 日本とタイの大きな違いはやはり治安だと思う。20年ほどタイに住んでいて、住居選びに最も気をつけたいのはそこに限るとボクは思う。通勤のしやすさ、飲食店の数、渋滞などは流動的であるし、そのエリアの人気の度合いで変わってくる。また、車があれば解決する問題も少なくない。タイは一般的な外国人は不動産購入に対してローンは組めないが、車購入の場合は外国人名義でローンを組むことは可能だ。だから、車を手に入れることは不動産ほどハードルが高くない。

 とにかく治安だけは気をつけないといけないが、強盗だとか身に危険が生じる事件はそうめったに起こらない。むしろ、近所の人とのトラブルだとか、そういったことの心配が大きい。そのあたりも含めた治安という意味だ。たとえばだが、タイ人は日本人よりもわりと安易に金銭の貸し借りをする。日本もそうだが、借金の申し込みを断るとなぜか断った方が罵られることもよくある。少額の金銭トラブルがいろいろな問題に発展することもある。外国人だと特に言いやすいのか、わりとそういった話が舞い込んでくるのだ。

 そう考えると、ある程度ちゃんとしたコンドミニアムなどに暮らした方がいい。経験値があればアパートなどでもかまわないが、いきなりは難しいかもしれない。近隣住民と自分の経済力がだいたい同じくらいがちょうどいいのだ。

ただ、一方で、そこそこのコンドミニアムなどは近所との交流が希薄になる。大きな物件で何百世帯が入っているというのに孤独を感じることもある。そのあたりのさじ加減が難しいのだが、広い意味での治安に注意しつつ、自分にとってちょうどいい物件をみつけたいものだ。

大雑把な希望別のおすすめ

 最後にボクの個人的な見解ではあるが、大雑把に物件条件やライフスタイルを加味したおすすめの物件形態やエリアを紹介したい。移住時の参考になればと思う。

■タイランド・エリートを利用して移住したい派

・おすすめ地域:バンコク中心(BTS沿線)

・おすすめ形態:サービスアパート、コンドミニアム

・家賃水準:5万~10万バーツ

・解説:地下鉄MRTよりもとりあえずBTSの方が外国人には便利だ。日本人が多い地域を希望するならプロンポン駅辺り、少なめがいいならシーロム通りのエリア。飲食店、銀行、商業施設がどこも近いので便利でもある。このエリアなら空港などへのリムジン送迎も利用しやすい。

■とにかく便利に暮らしたい派

・おすすめ地域:バンコク中心(BTSアソーク駅~トンロー駅の圏内)

・おすすめ形態:サービスアパート、コンドミニアム

・家賃水準:5万~10万バーツ

・解説:なんだかんだでやはりバンコク中心が一番。車がなくてもなんら支障なく暮らせるし、夜遅くなっても身の危険を感じることはほとんどない。

■郊外で暮らしたい派

・おすすめ地域:サムットプラカンやノンタブリー県の電車沿線

・おすすめ形態:コンドミニアム

・家賃水準:2万バーツ~

・解説:BTSやMRTの新線や延伸がすでに開通しているので、この地域なら便利に暮らせる。治安はバンコクほどはよくないにしても、よほど変な行動をしない限りは危なくない。

■犬や猫とも暮らしたい派

・おすすめ地域:バンコク郊外

・おすすめ形態:タウンハウス、一軒家

・家賃水準:3万バーツ~

・解説:犬の場合は広いタウンハウスや一軒家だといい。そうするとやや郊外寄りがおすすめ。ただ、バンコク中心にも小型犬可のコンドミニアムもある。猫に関しては中心地でも可能な物件も多い。

■日本が寒い間だけタイにいる派

・おすすめ地域:BTS、MRT沿線

・おすすめ形態:コンドミニアム

・家賃水準:3万バーツ~

・解説:賃貸なら中心地がいい。1~3か月程度の期間で契約できる物件が効率的。購入の場合は沿線上であればどこでも問題ない。空港へも電車で行き来できる利便性がある。

■家族で移住したい派

・おすすめ地域:できるだけバンコク中心地寄り

・おすすめ形態:コンドミニアム

・家賃水準:4万バーツ~

・解説:学校を中心に考えた方がいい。通学を考慮すると、最悪BTSやMRTの沿線上で。一軒家などもありだが、広さを考えるとお手伝いさんも必要で、別途費用がかかってくる。

 タイはバンコク中心地のコンドミニアムが高騰しているので、今現在は買うべき水準を超えていると思う。一方で賃貸は供給が多いので、わりと賃借人が選べる立場にあると感じる(法的にはオーナーの方が立場が強いけれど)。それだけ希望に沿った物件が多い。

観光で慣れていても暮らすとなると話が違う。駐在員経験などで何年も暮らしたことがあるならばいいが、それ以外の場合は基本的には移住初心者と思うべき。だから、基本的には移住の初めは都心に住むことをおすすめしたい。

 あとは、慣れてきたときに住みたいエリアなどに引っ越せばいい。タイは物価的には家賃はあまり高くない。日本よりもずっと気楽に引っ越しができるので、好きなときに好きな場所へ住処を移せるのは大きな魅力だ。今回の連載を参考に、タイ生活をエンジョイできる住まいをみつけてもらえたら幸いだ。

筆者紹介

高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。

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