第2回「タイのスマホ事情2021」
前回はタイ移住にはスマホが欠かせないことを大雑把に紹介したが、今回はより詳しくタイのスマホ事情を見ていこう。よりタイの生活においてスマホの存在が大切かどうかがわかるはずだ。
Wi-Fiにどこでも繋げられる
まず、タイにおいてスマホ事情が日本よりも優れていることはWi-Fi環境にある。日本国内は日本の携帯キャリアのSIMカードを使っていないと途端にネット難民になりかねない。ボクの経験では、ある有名カフェ・チェーンでWi-Fi利用をしようとしたところ、店員から「ネットで登録すればWi-Fiが使えます」といわれた。そのネットを使いに来たのにどうやって登録せよというのか。
近年は日本でも空港や大型家電量販店でデータSIMならすぐに手に入るようにはなった。タイも空港で購入が可能だが、なにより、バンコクや他県の県庁所在地などの大きな街なら多くの飲食店、商業施設で無料Wi-Fiがある。店によっては暗証番号も必要だが、店員に聞けばすぐに教えてもらえる。タイのSIMカードがなくてもWi-Fiが利用できる端末さえあればすぐさまネットにアクセスできる点は、日本とは大きく違って相当便利だといえる。このWi-Fiに関しては次回の連載でもっと詳しく取り上げたい。
それから、タイは携帯キャリアが選びやすい。というのは、大手が3社しかないからだ。厳密には日本のように大手キャリアの周波数帯を借りた小さなところもあるにはあるが、一般的にはほとんど無縁で、タイの大手といえば下記の3社になる。
・AIS:http://www.ais.co.th/en/
・truemoveH:http://truemoveh.truecorp.co.th/?ln=en
・dtac:http://www.dtac.co.th/en/home.html
タイは日本と同じ2020年3月から順次各社より5G(第5世代移動通信システム)のサービスが始まっている。適切な端末を使用していれば、ネットスピードはかなり快適だ(ただし、地域差があるので注意)。どのキャリアを選ぶべきなのかはSIMカードの購入に関する回で紹介していく。
日本ではデータSIM入手がだいぶ容易になったが、今でもちょっと小さな町では買える店が限られる。東京や大阪といった大都市だけで見れば問題ないが、ちょっと郊外に行くと家電量販店でも扱っていなかったりする。一方タイは至るところに携帯ショップがあって、なにもキャリア窓口や大型商業施設に行かなくてもいい。この利便性は素晴らしい。
使いこなせれば便利なアプリも目白押し
スマホが使えるようになると、タイならではのアプリを入れることでタイの生活がより快適に、かつより安くすることも可能だ。「タイランド・エリート」ならメンバー向けの各種割引サービスなどもあるが、それに似たようなものもたくさんあるといってもいい。
たとえば、『eatigo』(https://eatigo.com/)というアプリはレストランの割引つき予約アプリになる。時間帯ごとに割引率が違い、元々閑散としていた時間帯ほど割引率が高くなる。飲食店側も稼げなかった時間に客が入るので、大きく割り引いてくれるのだ。ホテルや商業施設の高級レストランがより安く利用できるので、使いこなせるとかなり便利なアプリ。
それから『Grab』(https://www.grab.com/th/en/)も欠かせない。本来はタクシー配車アプリだ。バンコクでもソイ(小路)の奥ではなかなかタクシーが捕まらない。そのときにこのアプリを使えば、タクシーやバイクタクシーが呼べるというわけだ。治安的にも流しを使うより安全だ。
Grabは日本でいうところのUberに当たる。当初タイにもあったが、諸々の事情で撤退し、今東南アジアはGrabが主流だ。eatigoもそうだが、これらアプリは国際展開しているので、タイ以外でも利用できる。Grabはフードデリバリーもあるので、好きな飲食店の食べものを取り寄せることができ、これひとつで生活が楽になる優れたアプリだ。
フードデリバリーでいえば、ほかにも複数あるし、前回少し触れたように銀行アプリも便利。屋台からスーパーの買いものなどにも利用できるし、光熱費などの支払いにも使える。各種支払を一括で管理できるアプリまである。さらに、タイの携帯キャリアを利用していれば、飲食店のキャンペーンが特定のキャリアユーザー向けであることもあったり、スマホを持っているだけでいちいちなにかしらの割引が受けられる。
タイのアプリは生活に即したものが多いので、日々便利に、そして生活費が安くなる傾向にある。こういったところもまた、タイ生活にスマホが欠かせない理由になる。
タイから日本へ一時帰国の際はちょっと注意を
タイは普通の携帯電話時代からSIMカードを使ったシステムになっていた。簡単にいえば、端末購入とキャリア契約はそれぞれ別々にしていたのだ。携帯ショップで端末を購入し、キャリアオフィスで契約してSIMカードを入れ、初めて使えるようになるという仕組みだった。
これはつまり、携帯端末自体にいわゆるSIMロックがかかっていなかった。日本のスマホ、あるいはスマホ普及直前の携帯はSIMカードを差し込むタイプになったものの、指定のキャリアSIMでしか電話が作動しないようなプログラミングがされている。タイは別々に購入することが普通なので、どのキャリアのSIMでも問題ないようロックがかかっていない。そのため、端末の選択肢が機種だけでなく、購入場所やその価格において幅広いのがタイの特徴だ。
逆にいえば、日本で購入したスマホにタイのキャリアSIMを挿入する場合、最初からSIMロックがされていないか、SIMロック解除をした機種を使用しなければならない。SIMロック解除は契約中に利用キャリアに行くとやってもらえる。あるいはタイの携帯ショップでもロック解除は可能。ただ、その後動作不良が起こるケースもよくあるので気をつけたい。
それから移住後に日本へ一時帰国する際、タイのスマホを日本で利用するなら法令的に知っておくべきことがある。タイのスマホはほとんどがSIMフリー(ロックされていない端末)なので、日本に持ってきてデータSIMや日本のキャリアSIMを使うことができる。しかし、注意したいのは「技適マーク」だ。以前はスマホのどこかに記されていたマークで、今は設定などの「認証」といった項目内において画面上で確認できる。技適マークとは下記の証明を示すものだ。
・技術基準適合証明:電波法上の無線設備に対する制度
・技術基準適合認定:電気通信事業法上の端末機器に対する制度
このいずれか、あるいは両方の証明と認定を受けていれば、日本でWi-Fiなどを使ってもなんら問題はない。両方ともないと本来は日本でWi-Fiなどを利用することは違法行為になる。「本来は無線免許がないといけないところ、技適マークがあれば無免許でもいい」といったニュアンスのマークで、ないと場合によっては罰金刑もあるようだ。
そして、タイで販売される端末のほとんどはこの技適マークがない。ただ、2016年から訪日観光客などの90日の滞在までは技適マークなしでも問題がなくなった。一時帰国が証明できれば、日本人でも入国から90日間は「たぶん」問題ない。
タイにも同様の法令があるかどうか調べてみたが、確認できなかった。まあWi-Fiの自由度が高い国なので、海外端末は問題はないとは思う。しかし、ご存じのように近年のスマホはバッテリーの消耗が激しい上に交換がユーザーでできない。万が一の故障やトラブルを考えると、移住する場合に限ってはやはり端末もタイで購入した方がいい。
多少注意が必要な面はあるが、とにかく日本よりも制限が少なく、機種も選択肢が多いし、アプリにもおもしろいものがたくさんある。タイのアプリの世界は魅力的なのだ。