第5回「Wi-Fi機器があれば東南アジア旅行も充実」
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 本連載ではタイのWi-Fi環境について紹介してきたが、タイに来る際に持参してきたWi-Fiが利用できる機器、あるいはタイで買ったそういった機器は、タイだけでなく周辺諸国でも役に立つ。スマホ、パソコン、タブレットなど、Wi-Fiが使えるものをタイの周辺諸国に持って行けば、そこでもネット難民になることを避けることができるのだ。

「タイランド・エリート」のメンバーの中には、タイに拠点を置いて世界中を旅行しようという人もいることだろう。そんな人にも非常に役に立つことは間違いない。

各国の無料Wi-Fi状況を一挙紹介

 簡単に言ってしまえば、「時代」。というわけで、なにもタイだけでなく、周辺国もインターネットは当たり前に利用され、タイ同様、Wi-Fiも自由に使える。前回、タイでIT機器を購入するメリットを紹介したが、特にタブレットにおいては中国製などはSIM挿入口がなく、Wi-Fi利用に特化した商品もあるほどだ。

 東南アジア各国もタイと同じように法令が日本と違い、比較的容易にWi-Fiを導入できるようだ。そのため、どこでも自由にWi-Fiが使える。たとえばベトナムはボクも大好きな国のひとつで、ここ数年は年に3回も4回も行くほど。最後の滞在時(2020年3月中旬)こそAIS社の国際SIMカードを利用したものの、それ以前は一度もデータSIMなどを購入したことがなく、すべてWi-Fiで過ごしていた。それくらいWi-Fiがどこにでもあって便利なのだ。

 ここではボクが行った各国のWi-Fiの状況を紹介したい。ただ、数年前に行ったきりで足を運んでいない国もあるので、やや状況は変わっているかもしれないが。

・ラオス

 タイの北と東側で接するラオスもWi-Fiはわりと自由に使える。タイとはメコン川で区切られているが、たとえば首都ビエンチャンはメコン川沿いの飲食店やホテルならタイの携帯電波が入る。ただ、100メートルも街中に入るとタイの電波は届かない。

 Wi-Fiはどこでもあるという感じ。ビエンチャンでさえ世界規模のチェーン店はほぼないものの、食堂や屋台以外の飲食店ならだいたい無料Wi-Fiがある。ホテルはゲストハウスを含め、基本的には部屋でも利用できるくらい電波はある。

 データSIMやプリペイドSIMもあるが、確かプリペイドの方は設定が難しかったと記憶している。ショップの人にやってもらうといいかも。ただ、IT機器の購入は勧めない。中国製が多く、また場合によっては電池などをニセモノの怪しいものに入れ替えられていることがあり、ショップの人も「爆発するかもしれないから気をつけた方がいい」というくらい。

・ミャンマー

 ミャンマーのWi-Fiはちゃんとしたホテルなら使える。飲食店もそれなりにしっかりした店で利用できるという印象だった。観光スポットには電波はなかった。ただ、ボクが行ったのは新首都のネピドー、ミャンマー最南端の町コータウン、仏教遺跡のバガンとやや特殊なエリアだが。

現状は軍政の問題で殺伐としていたり、状況が20年くらい前に一気に戻っている。発言の自由もなく、ネット規制も敷かれているというので、近々に旅行で行く外国人はそういないでしょう。正常化してからの状況を要確認だ。

・カンボジア

 カンボジアは2011年のころにはすでにホテルやゲストハウスに普通にWi-Fiがあった。アンコールワットや首都のプノンペンは飲食店なら街中のちゃんとしたところならWi-Fiが使えた。きっと今はもっと便利になっているはず。

・ベトナム

 ベトナムこそWi-Fi天国だ。空港は到着フロアから遅いもののWi-Fiが無料で使える。初期登録画面はベトナム語でわかりにくいが、「はい」のようなところを何回か押すと使えるようになる。データSIMも入国審査前に購入可能だ。ハノイやホーチミンはエアポートバスが市街まで最も安く行ける上、そのバス車内でもWi-Fiが使える。すべてではなく、最近はその台数もかなり減ってしまったものの、バスで情報検索できるのはありがたい。

 ホテルやゲストハウスは部屋で使えるところがほとんど。そこそこに速いので快適。飲食店も食堂や屋台は微妙だが、コーヒーショップなら普通にWi-Fiを使える。しかも、何年経ってもパスワードを変えない。ボクの経験では、あるバーに入ったときに初めての店だと思っていたら、なにもしていないのにネットに繋がった。実は以前に来たことがあったらしい。スマホがパスワードを記憶していた。

 難点はタイ以上に英語が通じないため、パスワードを訊いても答えが返ってこないことが多い。中・長距離バスは大概Wi-Fiが使えるものの、声調記号を外したベトナム語になっていることもあって、答えてもらってもなんだかわからないということもある。

発達した一方で注意点も増えてきた

 タイは政府が様々な事柄をIT化している。銀行アプリも発達しているし、いろいろなことがスマホ1台でできるようになった。そんな中でやはり問題点も増えてきている。ネットを利用した犯罪だ。

 日本人が多く受けている被害はSNSの乗っ取り。どういう手口でそのようなことになるのかはボクにもわからないが、仕事や諸々でネットやSNSを頻繁に使う人はよくアカウントを乗っ取られている。よく見かけるのが『LINE』の乗っ取り。本人には金銭的被害がなく、その人と連絡をしている人に対して金銭の要求(主になんらかしらのプリペイドカードを買わせて、その番号を送ってもらう手口)をする。普通に考えれば騙されることはないが、突然そういったメッセージが来るのでびっくりして、言われたままに動く人もいるかもしれない。

 それからウィルス対策もしっかりしておきたい。タイのウェブサイトなどはいまだになんらかしらのコンピューター・ウィルスが仕掛けられていることがある。現在においても日本のウェブサイトほど情報が充実していなくて、誰かのコピーが氾濫している。そのため、中には悪質なサイトも存在し、それを間違って開いてしまったら危険だ。こういったウィルスなどは主にポルノサイトにあるケースがよく見られる。タイの場合は海外の大きくて有名なそういったサイトは規制がかかっていて閲覧できないようになっている。一方で、タイ国内の悪質サイトは取り締まり切れていないようで、そういったサイトを接続するとウィルス対策ソフトから警告が出るので、それに従って開かない方がいい。

 いわゆるネット・リテラシーというものが各位に備わっていないと、日本以上に危ない可能性を持っているのもタイのネットの現実だ。ただ、それ以上にとにかく便利だ。タイ政府は日本よりもむしろ積極的にITを生活に取り入れようとしているので、今後法制度はしっかりと整備されるに違いない。

 こういってはなんだが、日本のネット社会は偽名などで利用できることから罵詈雑言がひどい。近年はそれにより社会問題になっている。タイはその点はまだ日本のネット社会黎明期にあたるような時代なので、大手ネット掲示板『パンティップ』なども質問者に対してみんな誠実に回答していたりする。この点はタイ語のサイトを利用していて気持ちよく感じるところだ。タイ語学習者もこういうところで読み書きの勉強がてら書き込みしてみたらおもしろいのではないかと思うほど。

 スマホの使い方やWi-Fiについてなど最低限の知識を持って移住すれば、タイの長期生活は必ずや快適になることは間違いない。

筆者紹介

高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。

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