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第4回「タイ人の学校に通わせるのはダメなのか」

 

 就学期・学齢期の子どもたちを抱えてタイに移住した場合、考えなければならないのは、どこで教育を受けさせるか、だ。これまで日本人学校、インターナショナル校のメリットやデメリットを紹介してきたが、いずれも共通するのは「学費が高額になる」ことだ。もし、タイの学校に通わせたら、学費はかなり安くなるのではないか。そう考える人も多いだろう。

 ここでは、もし外国人移住家族がタイの学校に通わせた場合、どんなことになるのかを見ていきたい。

タイの教育制度は格差社会が浮き彫りになる

 タイの学校とはすなわち、タイ政府が行うタイ式教育を導入した学校のことだ。連載1回目でも紹介したが、タイは幼稚園に始まり、小学校6年間、中高6年間、大学が主な進学先になる。

タイでは基礎教育は幼稚園、小学校、中高を指す。幼稚園はタイ語でアヌバーンだ。日本と同じで年少は基本的には4歳からだが、中には早くに職場復帰する母親もいるので、1歳から幼稚園に通う子もいる。

小学校はプラトムという。頭文字を取って、学年は6年制でポー1~ポー6と呼ばれる。内容は日本の小学校とほとんど同じで、算数だとか理科、社会などがある。授業内容もだいたい日本と同じようだ。ただ、タイは昔からポー1から英語の授業がある。

中高はマッタヨム。頭文字からモー1ときてモー6まである。日本での中学の課程はモー3まで、モー4からは高校の扱いになる。前者は日本語だと前期中等教育、後者は後期中等教育だ。地域によっては同じ校舎でずっと6年間学ぶこともあれば、農村などではモー4から別の校舎で数校の生徒が統合されることもある。モー4からは職業訓練(日本での工業高校課程のようなもの)もあれば、選択授業が英語だけでなく日本語や中国語などの外国語を学ぶことができる。

義務教育はモー3までだ。また2009年からは幼稚園からモー6までの授業料は無償ということになっている。ただし、これは公立校が対象になるようだ。

予算不足なのか、タイの公立校は特に地方の農村などの学校は教育水準が著しく低いという社会問題がある。十分な教師の数を確保できないだとか、いくつもの問題を抱えているのが現実だ。

また、バンコク都内でも公立校格差がある。そのため、公立校に通わせる保護者は事前にいい学校を調べ上げ、住まいから越境してでもそこに入学の許可を取りつける。公立校は本来無試験なのに入学の倍率が学校によって違うという問題がある。ちなみに、モー4からの後期中等教育時には入学試験がある場合も。

タイにも日本にあるセンター試験に相当するものがある

 高校までの課程においては私立校も存在する。また、タイは慈善団体が運営する学校もあったり、様々な運営方式になっているようだ。結局、社会的な、あるいは収入的な格差がタイは大きいので、地域ごとにそのエリアに見合った方式の学校があるということになる。

 人気のある私立校入学や先の公立校越境などでは学校や教師への特別な計らいが必要になるケースもかつてはあったようだ。たとえば、ボクの知り合いのタイ人はひとり娘を有名私立に入れる際、何十万バーツも寄付をしなければならず、家計が大変だと言っていた。ただ、それはあくまでもその学校だけかもしれないし、「しなければならない」という彼の思い込みが勝手にそうさせていたのかもしれない。特別に寄付金を出さないと子どもが不利な扱いを受ける、と。しかし、ボクの子どもたちの学校から入学して以来一度もそういった要請はない。一部の親は確かに寄付金を出しているが、それもちゃんと学校の設備投資に使われていることが明確に公表されている。

 タイの私立校はインターナショナル校に似ている。多くが、幼稚園からモー6まで一貫教育だし、特徴はだいたいどこも英語教育に熱心という点だ。インターと違うのは、タイ人比率が90%を超えているので、日常会話はタイ語になる。ボクの子どもたちもこのタイプに通っている。外国人児童・生徒はほぼ全員がタイと外国人のハーフである。

 ちなみに、私立校で英語教育に力を入れているということは、イコール、英語教師が多いということになるが、少なくともボクの子どもの学校では欧米人の先生は数人しかいない。あとはフィリピン人やインド人の英語教師ばかりだ。

私立の一貫教育のメリットは進学に頭を悩ませることがなく楽なこと。しかし、節目がないというデメリットも(あくまでもボクの子どもたちの学校の例だが)。上の子は中3になっているが、ボク自身はこれまで一度も入学式や卒業式を参観したことがない。そもそもそんな式がないのだから。こうなると、なんだかケジメがついていないような気がして落ち着かない。

さて、大学は国立、私立とたくさんある。以前は国立校の卒業式は国王陛下がひとりひとりに卒業証書を授与するという、日本では考えられない式典があった。だから、卒業式は国王陛下のスケジュールに左右されたし、国立大卒ということはすなわち国王陛下に認められた人物ということで、タイでは本当に名誉なことだった。しかし、前国王が高齢で崩御前の10年20年はそれもなかなかできなくなった。また、タクシン・チナワット元首相の時代だったと思うが、それまで大学ではなかった教育機関が「大学(マハーウィッタヤーライ)」へと格上げできるようになり、今はタイにもたくさんの大学が存在する。

大学進学はやや複雑なので説明は簡単にするが、タイには数種類のセンター試験のようなものが存在する。中1から、あるいは高1のころから定期的にその試験を受け、これにより受験できる大学が決まってくる。センター試験らしきもので入学が決まる大学もあれば、別途試験がある。あくまでもこのセンター試験は複数あるし、大学によって選考基準などは違う。ただ、日本のようにある日突然勉学に目覚めて勉強ができるようになっても、それが高校2年や3年のころだとチャンスがそれほど得られないというデメリットがある。

タイの大学に進学することはいいのか悪いのか

 外国人がタイの大学に進学する場合、外国人留学生を受け入れるところであれば基本的にはどこでも可能だ。見ていると、タイの東大とも言われるチュラロンコン大学、タイの早稲田(?)のタマサート大学、英語で講義が行われるアサンプション大学に外国人が多いような気がする。

 タイの大学に進学する場合、厳しいことを言えば、タイ語やタイ文学、タイ文化を研究するのでなければ、果たして人生を長い目で見たときにどうなのか疑問が残る。世界的な大学ランキングを見れば、ほかの国の方がいい。ただ、タイの農業は今かなり熱い。日本の大学がタイの大学と提携して研究室をタイに置くほど、タイの農学部はレベルが高いと言われる。

 幼稚園に関してはタイのところでもなんら問題はない。ただ、私立の幼稚園はこの段階で英語やタイ語の授業を採り入れるので、公立幼稚園とは差がついてくる。

 一方で、小学校から高校の公立校は外国人の入学は難しい。そもそも、タイ人のための学校で外国人の受け入れを想定していないケースが多いからだ。また、地域格差が大きいので、バンコクならともかく、地方の学校となればなおさら厳しい。

 ボクの子どもの友人はタイとロシアのハーフだった。離婚でタイ人の母親ひとりで面倒を見なければならなくなり、公立校に申し込みに行った。ところが、タイ国籍の子どもでありながら、学校側が入学を拒否。というのは、見た目が白人のような女の子だったので、学校側がいじめを懸念したのだ。日本ほど陰湿ではないが、タイにもいじめはあるようだ。

 日本人の子どもであれば中華系タイ人とそれほど見た目は変わらないので、そういったいじめはないだろう。しかし、将来的に考えると、タイの公立校からインターや日本人学校、日本の学校、第3国の学校への進学はかなり厳しい。できないことはない。タイ人の子どもでも公立校から外国の一流大学に進学する例もあるからだ。ただ、それはかなりの努力をした結果だ。タイにおいては外国人である我々が自分の子どもたちにわざわざそんな苦労させる必要はなかろう。

 ただ、将来的に子どもがタイ国籍を取得してタイ人になるというのであれば、なんとか頼み込んでタイの学校に入れることはできなくはない。しかし、親はともかく、子どもが小さいのにそこまで決めるのも難しいのではないか。

 そもそも、当連載は主に『タイランド・エリート』の取得で移住することを前提に話している。タイランド・エリートを取得する世帯の生活パターンや移住計画を想定すると、タイの教育は方向性が違うような気もする。タイの教育の中には、かつて移民としてやって来た中国人を中心にした外国人をタイ人へと同化する政策の意味合いもあった。だから、世界中を巡って暮らしたいと見られるタイランド・エリートのメンバーには日本人学校かインター校をおすすめしたい。

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