第3回 タイ料理のマナーを知っていればどこでも無問題

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 タイ料理にもマナーがある。日本では問題ないことでも、タイでは大きなタブーというケースもあるので、あらかじめ知っておくべき。

 今回紹介するマナーは、いろいろと細かいことになるかもしれない。実際にはタイ人はおおらかなので、よほどフォーマルな場所でない限りは許してもらえる。ただ、下記2点だけ。これだけはタイ人も不快に感じるようなので注意したい。「タイランド・エリート」のメンバー階層でも、バックパッカーのような低予算旅行者でも、特に日本人男性はやってしまいがちのことだ。それは、

・麺を音を立ててすする

・丼などに口をつけてスープを飲む

 である。麺を音を立てて食べることは日本人は意識していないとやってしまいがちだ。それから、味噌汁のような小さな器でスープが出てくる料理もある。たとえば鶏ご飯の「カオマンガイ」など。麺類もそうだが、タイでは器に口をつけることは卑しい食べ方になるので、本当にやってはいけない。(※ただ、日本人経営の麺類店と和食店の味噌汁は例外と思っていい)

スプーンとフォークを使いこなすこと

 まずはスプーンとフォークの使い方だ。タイでは丼の麺料理くらいでしか箸を使わない。他方、スプーンとフォークは日常的に使うものの、欧米のような使い方とも違う。基本は右手にスプーン、左手にフォークとなる。タイでは今でも左手は不浄だからのようで、スプーンを主役に、フォークは補助的な役割で使用する。

一般的にはスプーンで食べものを掬って口に運ぶ。食べものが大きければフォークで押さえてスプーンをナイフ代わりにしてひと口大に切る。フォークで食べものを刺して食べることは子どものやることで、大人はまずしない。ただ、タイ人はおおらかなこと、また食事マナーは和食やフレンチほど確立されていないため、下品にならなければいいともいえるので、あくまでも大雑把なイメージとして捉えてほしい。

 先述のように器に口をつけることがないのと同じで、たとえば肉の塊に直接食らいつくのはもってのほか。タイ式ヤキトリ「ガイヤーン」は肉が大きいが、本来は手で持ったり、フォークで刺してかぶりつくことはしない。ただ、最近は欧米のファストフードも浸透していることもあって、フライドチキンのようにヤキトリを食べることもあるが。

 要するに、時代も変化すれば食事のマナーも変化するということだ。とにかく、日本人が注意したいのは、器に直接口をつけないことと、麺類を食べるときに音を立てないこと。これだけ守れば、だいたい問題はないと言ってもいい。

意外と混乱するのがチップの払い方

 タイ人の食事パターンは、ひとり1品だけ頼んで食べる、大皿で注文してみんなで取り分けるかに大別される。屋台は基本的にひとり1品。一方、夜の会食などでは大皿を何品か注文してシェアする。だいたいちゃんとしたレストランなどでの食事会の場合だ。

タイ人との食事でパターンが読めないときは直接訊いていい。「どうやって注文する?」と言えば、お腹があまり空いていないときは1品ずつだし、わいわい食べるならシェアと言われるだろう。

 ちなみに、シェアの際にビール(あるいはアルコール)を頼みたければ遠慮なく頼んでいい。飲まない人は米を頼む。高級レストランだとご飯が自動的に回ってくる。給仕が見て周り、食べたければ合図を送れば、給仕が取り皿に適量盛ってくれる。食べればお金がかかるし、食べなければお金はかからない。

 重要にもなってくるのが会計の仕方。「タイランド・エリート」のメンバーだと幅広い所得層の人々とタイ国内でつき合っていくことになるかと思う。特にタイ人との食事の場合は、まず基本的にお金がある人が払うことが前提だ。だから、タイ人は奢ってもらうことになんの遠慮もないし、逆にあるときには躊躇わず奢るのもタイ人気質。

誰が目上か明確だといいのだが、友人同士や同世代だと誰が払うか迷うかもしれない。しかし、最近は日本的な割り勘も普通だ。とにかく、そのときの状況を読んで、誰が払うのかを見ればいい。わからなければダイレクトに訊いてしまってもいい。タイ人はお金の話はオープンなので、気にせずに「誰が払う?」とみんなを見回せばいいのだ。

現実的には、タイ人富裕層で、かつ年上の人がいればその人が払う。同年代以下しかいない場合で、特に経済的に豊かではない人と一緒だったら、我々日本人が払うケースが多いかもしれない。それから、誕生日パーティーの場合、主役が全額払うというのも常識と心得たい。

 会計は屋台でもレストランでも基本的にはテーブルで行う。ただ、例外もあって、フードコートは食券制だし、日本式あるいは和食のチェーン店ではレジで支払うこともある。

会計は近くにいる店員に「チェック・ビン」と言って頼む。遠くにしか店員がいなかったら手を挙げ、店員に向かってテーブルの上を人差し指でぐるぐると回してみせると会計の合図になる。昔の日本では注文票にサインをする仕草を会計の合図にしていたが、そういう感じだ。

 ちゃんと伝わると注文した伝票と共に請求がテーブルに届けられる。一応、合っているかどうかを確認しておこう。よく間違っていることがある。このあたりはのんびり適当にやっているので、怒らずに大目に見るべきだ。手書きだと日本人とは数字の書き方が少し違うので慣れが必要だが、タイ語が読めなくても数字と列で品数がわかるので、それで判断すればいいでしょう。

 タイは基本的にはチップは不要だ。屋台や食堂は店員に小遣いをあげる感覚で渡すことはある。あるいは、お釣りの小銭を受け取らないで帰るという方法もチップを渡すことと同様の行為になる。閉店後にその日の従業員数で分け合うので、店全体にチップを渡したことになるのだ。

もし、個人的に特定の給仕にチップを渡したければ、その人を呼んで直接渡すこと。そうすれば、そのチップは彼/彼女のものになる。最近はサービスチャージが10%くらいかかっている店も多く、請求書内にその記載があればチップは不要と思えばいい。ネットやメニューなどに『〇〇〇バーツ++』とあれば、このプラスはVAT(日本でいう消費税)とサービスチャージを意味する。

 高級店などではクレジットカードも使える。タイはよほど変な店でない限りスキミングされることはない。スキミングや二重に切られたりするのは、ボクの経験上では悪徳バーくらい。ただ、気をつけたいのは、本来はカード会社と加盟店の間の違反になる、カード手数料を客に負担させる店があること。3%を加盟店がカード会社に払うのに、それを客に負担させる場合がたまにあるのだ。ここ2年くらいは進んでいて、カードもICチップを読み込んで、暗証番号を打ったり、電子サインをしたりなどでセキュリティーは向上しているので、3%負担だけ気をつけたい。

筆者紹介

高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。

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