第2回目 タクシーやトゥクトゥクの気持ちのいい使い方

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 タイのタクシーやトゥクトゥクは、日本と同じで商用の免許がある(日本での二種免)。これがないと、客を拾って運転してはいけない。ある方法を使うと商用免許がなくても運転手になれることから、あまり評判がよくないのも現実。ただ、住んでいて思うのは、言われるほど悪いタクシーも多くない。

 そこで、20年の在住経験からボクがタクシーの選び方などをいくつか紹介していきたい。バンコクにおいてはタクシーは最も身近な移動手段なので、快適に利用したいところだ。

いいタクシー・トゥクトゥクはこう選ぶ

 まず、タイのタクシーの基本から。タクシーが走ってきたら、フロントガラスに赤いランプが見えたらそれは空車を意味するので手を挙げて呼ぶ。乗車拒否も多いけれど、台数が多いので粘らずに次の車を探そう。

バンコクのタクシーはいろいろなカラーがあるが、黄色と緑のツートンカラーは日本でいう個人タクシーだ。ほかの色(後述の黄色と黒以外)はタクシー組合の車両になる(会社ではないのは次項で詳しく)。

 時代によってどちらを選ぶかはタイ人でも議論が分かれる。不景気だと誰が運転しているかわからない組合タクシーはよくないと言われる。現在は雇うにしても身分証を確認するので、どちらも問題ないとボクは思うが。強いて挙げるなら、新型車両を選択するといい。新規登録車両は9年間しか使えないので、最近は新しい車が多くなっている。ただ、黄色と黒のツートンの車両をたまに見かけるが、これは使用期限がない車両で、古い型は乗らない方がいい。

 悪質タクシーは基本的に外国人観光客を狙っている。彼らは獲物を捕らえるため、必ずどこかで待ち構える。空港もそうだし、ホテルの前にいるタクシーもよくない。逆に言えば、獲物のために網を張っていない「流し」のタクシー(通りを走っているタクシー)は基本的には安全。ただ、歓楽街が近いエリアは流しもひどいことがあるので注意。

 乗ったあとにも注意した方がいい部分もある。運転手が妙に機嫌が悪いとか、運転が荒いのもパス。怖いと感じたらすぐに降りること。メーターに改造を施され料金が異常に上がっていくこともある(日本人はターボメーターと呼ぶ)。あくまでも稀なケースで、ボク自身は20年住んでいてターボメーターに遭遇したことがない。

タイのタクシーメーターは走行距離、渋滞時の時間経過で料金が加算。必ず2バーツごとに上がる仕組みで、小数点以下は切り捨て。距離は走行距離に応じて単価が変わるが、1~12キロ区間は400メートルごと、時間は時速6キロ以下のとき約1分20秒ごとにそれぞれ2バーツ上がる。

一応タイ政府(実際にはタイ運輸省など)が悪質タクシーの通報窓口を設けている。悪質が認定されると車検時などに罰金が請求されるといった仕組みはあるが、実際機能しているのかどうかは怪しい。タイのタクシーはメーター制に移行してからずっと初乗り料金が変わっていない。だから、運輸省側もタクシー側に強く言えないのではないかなと思う。

交渉次第では他県へも行けるが、基本はメーターを使わない。目安は運転手の座席などに料金表がある。ただ、あくまで目安で、実際には表示金額の1.2~1.5倍以上はする。一方、パタヤは1500バーツ前後と思っているほど高くない。というのは、運転手はバンコクに戻る際に客を拾って帰ることができるからだ。

タクシー業界の裏側

 待ち構えているタクシーは悪質なケースが多いが、商業施設に待機するタクシーは例外だ。商業施設にタクシー担当者がいるわけではなく、ひとりの運転手やタクシー会社にその施設内で待機する権利を与える方式になっている。権利を得た人がチームを作り、彼らの中で決められたルールでサービスを運用。もしなにかあれば、商業施設側はリーダーの権利をはく奪するだけでチームを解散させることができる。だから待機タクシーも下手なことはしない。空港は運転手ひとりひとりに許可を与えていて監督しきれないため、悪質な運転手が混じるのかも。

 先述の個人タクシーと組合タクシーに話を戻すと、個人は個人名義でタクシーを買って商売する。組合タクシーは、タクシー組合が各組合カラーに塗装した車両を販売もしくはレンタルしている。個人タクシーはひとり1台しか保有できないのに対し、組合タクシーは複数台所有できる。資金がある人は複数購入し、半日800バーツ前後で貸し出す。貸し出す際に商用免許を確認しないこともあって、このあたりを不安視するタイ人もいる。組合タクシーは組合費がかかるものの、タクシー無線が搭載されて配車サービスに対応できるメリットがある。

 ちなみに、タクシーはトヨタがほとんど。一般市販される車両とほとんど同じだが、必要な塗装や装備がつけられるので、1台あたりは一般市販車価格に40万円くらい上乗せされた値段になる。

 かつてはタクシー運転手の強盗もあった。しかし、ここ10年前後ではそういった事件はほとんど聞かない。タクシー運転手曰く「今はスマートフォンもあって通報もしやすいし、すぐさまSNSにあげられるので、犯罪はわりに合わない」。ちゃんと商売した方が長い目で見て利益になるというのは、タクシーに限らず飲食店などもそうで、そのあたりはタイもだいぶサービスがよくなってきたと思う。

イマドキのタクシーはアプリで呼ぶ

 組合タクシーの配車無線より今はもっと便利なものがあって、無線を最初からオフにしている車両がほとんどになった。それはスマホで利用する配車アプリだ。「タイランド・エリート」メンバーも今後、タイ滞在には必須のアプリになると思う。

 日本のフードデリバリーブームでは『Uber(ウーバー)』が最も名前を聞くアプリになっている。実はタイだけでなく、東南アジアにウーバーは存在しない。実際には「あった」が、撤退を余儀なくされたのだ。

 タイや東南アジアで台頭しているのは『Grab(グラブ)』だ。マレーシア発のシンガポールの企業で、東南アジア各国ではフードデリバリーより先にタクシー配車アプリとして広まった。かつてのウーバーはいわば白タクとして走っていたが、グラブは各国でタクシー業界を取り込んだことで生き残った。

 これをスマホに落としておけばタクシーをどこからでも呼べる。バンコクでもソイの奥だとなかなかタクシーが来ないので、日本人在住者でも今やほとんどの人が利用していると言っていい。クレジットカード登録でキャッシュフリー利用もできるし、運転手に現金払いも可能だ。なにより、グラブなら東南アジア各国で利用できるので便利だ。

 タイ人100%がこのアプリを利用しているわけではないが、時間の問題だと思う。ベトナムにおいてはもはやタクシーは手を挙げて呼び止めるものではなくなっていて、みんなアプリで呼ぶことが当たり前になっている。しかもバイクタクシーもだ。タイもそのうちそうなるかもしれない。

バイクタクシーの使い方

最後に簡単にバイクタクシーの利用について。

 バイタクは基本的にソイ(大通りに対する小路)の入り口に待機している。近年になって料金表が待機所に掲示することが義務付けられ、わりと明朗になった。相場イメージは、ソイ内の近距離で10~15バーツ、中距離は20~30バーツ、長距離は40~50バーツといったところ。

 ソイ内を利用するのが本来のバイタクの使い方だが、一応大通りでも利用できる。渋滞をすり抜けられるので、遅刻しそうなときには便利だ。ただ、事故には注意したいこと(うしろに乗っている乗客はなにもできないけれど)と、料金がタクシーの1.5倍くらいかかる点はデメリット。また、大通りはヘルメットをつけないといけないので、髪型を気にする人には向かない。

 バイタクは縄張り意識が運転手間に残っている。そのため、タクシーと違って流しのバイタクはない。走行中の客なしバイタクは拠点に戻る途中で、ほとんどのケースでは手を挙げても止まってくれない。場所によっては稀に止まってくれるけれど、基本はソイの入り口スタートと思っておくべき。

筆者紹介

高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。

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