第3回 バスはタイ全土のどこにでも行ける
バスも鉄道に匹敵するほどの魅力ある乗りもので、世界中にマニアがいる。そんなバス愛好家にはバンコクの路線バスにも注目する人がいる。格安で異国の文化に触れることのできる手段なので、ボクもたまにバスに乗ってバンコクの風景を眺めながら移動することもある。ここではそんなバスに関することをいくつか挙げていきたい。
●バンコクの路線バスの乗り方
まず、日本の路線バスとタイのそれで大きく違うのは、バス停にいるだけではバスに乗れないこと。以前はバス停以外のところでも乗降ができることがあったが、今は一切それができないので、必ずバス停でバスを待つ。しかし、日本のようにバスは止まってくれない。
タイにおいては、タクシーと同じように、乗りたいバスが来たら手を上げる。実際には横に手を出し、運転手に合図を送ると止まってくれる。ただ、たまに無視されることもある。
料金はバスに乗って車掌に払う。電子マネーでの支払いに対応する車両もあるが、今はシステムそのものが運用されていないようで、基本的には現金。料金はノンエアコンは距離に関係なく一律、エアコンは距離次第。
ノンエアコンの赤バス、オレンジ色のミニバスは6.5バーツ、白い車両は9バーツ(いずれも取材時点)。エアコンは以前は一律のマイクロバスもあったが、今はほとんど見かけない。エアコンは車両のタイプによって初乗りも違うが、最も遠くても20バーツくらいというイメージ。赤バスなどに限定されるが回数券・定期券も存在するが、たぶん外国人で利用している人はほとんどいない。
車掌にお金を払うと、切符兼領収書を渡してくる。これは降車までしっかりと持っていること。たまに検査員が乗りこみ乗客が持つその紙をチェックしていく。おそらく無銭乗車より車掌の不正などを確認している。運転手と車掌は給与とは別に乗車賃の一部を報酬で受け取れるので、その不正を確認しているとボクは見ている。
バスにはすべて番号がついている。車両正面、背後の上とドアの辺り。難しいのは、その番号が規則的に配置されていないこと。1番と2番がどこかで繋がっているとかそういうわけではない。だから、タイ人でも知らない路線はどこに行くのかまったく把握していない。
この点に対処するためか、一応、ほとんどのバスのドア近辺や側面などにタイ語で代表的な通りやランドマークの名称が書かれている。また、この1年2年ではバス停に来るバスの番号とそのルートを表示するようになった。とはいえ、結局土地勘がないとそれを見たところで思った場所に行かないケースもあるが。
それと、同じ番号でも途中で折り返したり、高速道路を利用することもある。高速利用は料金に2バーツくらい上乗せがある。そういうバスはフロントガラスに黄色い看板が掲げられ、そこに高速、折り返しなどと書かれている。よくわからなければ、黄色い看板が出ているバスは避けよう。
●路線バスの楽しみ方
「タイランド・エリート」のメンバーだと移動はタクシー中心になる。在住日本人も大半がバスを使わない。とはいえ、ボクは路線バスにも魅力があることを伝えたい。初めて乗る路線で、ちゃんと目的地に着いたときの達成たるや。
タイのバスは時刻表がないので、そもそもバスがいつ来るのかわからない。逆に言えば、いつ目的地に着くかわからない。ということは、時間があるからこそ使える交通機関だ。時間を気にせずのんびりと座る。車窓を流れるバンコクの下町の風景。車内には一般庶民のタイ人たち。いつ着くのか、そもそも思ったところに行けるのかどうかもわからないドキドキ。こういったミニトリップを楽しめるのが路線バスの魅力だ。
最悪、思っていたところに行かなかった場合、適当に降りて通りを渡り、同じ番号のバスに乗れば元来た場所に戻ることができる。乗車賃も日本円にしたら数十円。たったこれだけの損失でちょっとしたローカルバスの旅を堪能できるのだ。
バスではタイ人の人のよさに触れることもできる。車掌に乗車賃を払うときに行きたい場所を言う。ノンエアコンでも地名を言っておくと、目的地付近でわざわざ教えてくれる。この優しさを垣間見ることができるので、路線バスは楽しいのだ。
●長距離バスは地方旅行に欠かせない
長距離バスはバンコクの場合、北部や東北部に行きたければ「モーチット・バスターミナル」へ。『チャトチャック・ウィークエンドマーケット』の近く。カンチャナブリやホアヒン、プーケットは『サーイタイ・マイ』という新・南バスターミナルに。以前はチャオプラヤ河を西岸に渡ってすぐだったが、移転して遠くなった。パタヤなど東部へはBTSエカマイ駅目の前にある「エカマイ・バスターミナル」に行く。
バス会社は各路線に数社ある。ターミナルに着くと各社の呼び込みが声をかけてくるので目的地を言うと、どこに窓口が集まっているか教えてもらえる。法令で料金が決まっているので、基本的には料金差はほぼない。人気路線や大きな街だと10~20分おき。辺鄙な場所でも1時間に1本くらいはある。
バスの等級で料金が違う。VIPバス、ファーストクラスは基本直行便で、途中は休憩所以外では止まらない。2等3等(今は3等はほとんどないかも)はエアコン、ノンエアコンがあって、途中の村々のバスターミナルや路上で路線バスのように客を拾う。そのため、所要時間はかなりかかる。その分安い。
VIPバスは日本の高級深夜バスほどではないかもしれないが、180度くらいのリクライニング・シートを備える。定員数も少ないので広々。距離が遠ければ遠いほど快適に移動できる。ただ、料金は高く、場合によってはLCCよりも高い。
バンコクに戻る際は、とりあえず降りたバスターミナルから乗ることが基本。地方の大きな都市はだいたい新と旧のターミナルがある。新ターミナルはバンコク行きのファーストクラス、VIP、あるいは各都市行きのバスが来る。旧ターミナルもバンコク行きはあるものの、2等以下、あるいは県内、隣接する県の村々を巡るバスが発着する傾向にある。
ちなみに長距離バスは法令で距離に応じて運転手や乗務員の数が決まっている。交代で運転するので、安全性は以前よりも高くなった。現実的には日本以上に事故が多いのが残念だが、1日に運行されるバスの数からすれば、事故率は高くないかもしれない。
中距離には乗り合いバンのロット・トゥーもある。これも一応ターミナルを結ぶが、途中での乗降も可能。あとは、バンコク、ナコンラチャシマー、ウドンタニー、ノンカイからラオスに行ける国際バスもある。民間の旅行社ならカンボジアやベトナムに行けるバスもある。距離的には飛行機を使った方がコスパがいいので、あまりおすすめしないけれども。
●その他の乗りものの使い方
トンロー通りなどを走るソンテウは各地で運行される。ソンテウというのは2列という意味で、かつてはトラックの荷台に2列の座席を設置していたことが呼称の由来だ。
バンコクのソンテウは基本的には赤色で統一された一律料金のバスのようなもの。パタヤやほかの地域では路線バスでもあり、タクシーとしても利用される。停留所はなく走ってきた車を好きなところで止める。手を振って止まったら、運転手に行き先を告げる。すでに誰かが乗っていればバスあるいは乗り合いタクシーとなる。誰も乗っていない場合は、タクシーとして利用できる。後者の場合、貸し切りをこちらで宣言すればタクシーとしてそこそこに料金が取られる。ほかの客を拾うことを容認していれば、料金は距離によってひとり数十バーツもかからない。都市によっては色で短距離・長距離を分けていることも。いわばローカルルールが横行しているので、慣れないうちはちょっと難しい。
スクムビット通りのソイ39にはシーローがいる。軽トラックを改造したタクシーで、ソイ39の入り口にたくさん並んでいる。基本的にはそこからソイの中に住む人が帰るために使うので、大通りを走ることはそうめったにない。