第4回 レストランや高級店でタイ料理を楽しむ

 ちゃんとした形態の飲食店、すなわち高級店やそれなりにしっかりしたレストランでもタイ料理を楽しめる。特にレストランは法人化しているケースが多いので、出店にそれなりの投資がされていることから値段設定は高めになる。とはいえ、その分味のクオリティーやサービスがしっかりしている。

バンコクなら、日本のタイ料理店よりもずっと高い、超高級レストランも少なくない。主に観光客やタイ人の富裕層向けで、中には海外から逆輸入で入ってきたタイ料理有名店も存在する。

屋台ではなく、高級店でタイ料理を楽しむというのはどういうことなのか、ここで少し解説したい。

高級店でタイ料理を楽しむこととは

 ちゃんとしたレストランを判断するひとつにエアコンの有無がある。中流層をターゲットにした料理店や、こてっこての外国人観光客向けだとエアコンがないこともある。昔はエアコンがある部屋は有料だったり、サービスチャージが別途かかるなど、特別な部屋だった。そういう時代もあったので、エアコンもひとつの判断材料になると言える。

 ちなみに、タイで初めてエアコンの部屋を無料にしたのは、タイスキで知られる「コカ・レストラン」だという。コカは元々は中華料理店で、中国の火鍋を原型にした鍋料理を出すようになり、それがいつしかタイスキと呼ばれるようになった(タイ語では実際にはスキーとかスキ・タイと呼ばれる)。日本料理のすき焼きから取ったとされるのだが、コカは熱い鍋料理を涼しいところで食べてもらおうと、エアコンをタイで初めて無料にしたのだった。

 ちゃんとしたレストランは法人化されていたり資本力があるので、店舗の規模が大きい、内装などにかなり凝っている、店員のサービスがしっかりしているというあたりが、行くに値するポイントになる。

タイ料理がおもしろいのは、タイでは家庭でも食べられるし、屋台でも食べられるし、高級店でも食べられるということだ。日本なら懐石料理を家庭で作って食べるということはまずない。タイは、屋台から高級店まで、メニューそのものは基本的に同じだ。それであれば、屋台で食べればいいじゃないかという話になる。しかし、そうではない。

創作料理系タイ料理店は別だが、どこもメニュー内容はそれほど変わらないものの、使っている食材とサービスがまったく違う。店舗ごとの味の違いは屋台同士でも起こりうるが、屋台と高級店が決定的に違うのは、そもそもの食材の善し悪しと管理方法だと思う。高級レストランはそれこそいい食材を手に入れるネットワークを構築し、常に同じクオリティーを出し続ける。屋台はとにかく安い食材を使い、味のクオリティーも日によって違うことが多々ある。その付加価値が高級店は高いといえる。

 サービスもレストランや高級店は屋台とは違う。屋台や食堂はときに対応がひどいケースが少なくない。タイ語ができなければ気がつかないかもしれないが、外国人客に対する言葉遣いや態度が不快なこともよくある。ただ、これは日本の飲食店サービスが過剰で、それに慣れ過ぎているからというのもあるかもしれない。タイの屋台や食堂では客と店側が対等だからそうなるとも言える。いずれにしたって、高くない値段で食事ができるのだから、ガミガミ怒ったって仕方がなかろう。

それでも、ちゃんとしたレストランや高級店ともなれば接客に関しては、また来たいと思わせる態度で接してくれる。要するに、お金を出すほどにそれなりのサービスを受けられるということでもある。明確なので、自分の経済レベルや気分で選べるということは非常にいいかもしれない。

次章で紹介するが、屋台や食堂にも素晴らしい店がある。実際、タイで『ミシュランガイド』が始まった際、小さな食堂が星を獲得して話題になった。そういった隠れた名店を探し出すのも、タイ国内でタイ料理を楽しむひとつの見どころとなる。

おすすめの高級タイ料理レストラン

 おすすめの高級店はいくつかあるが、立地条件と行きやすさから見ると、下記の2店がいいのかなと思う。

・ブルーエレファント https://www.blueelephant.com/bangkok/

 ベルギー人と結婚したタイ人女性が現地でタイ料理店を開き、欧州各地に支店ができたのち、バンコクに進出。逆輸入的に来た高級店で、一般タイ料理店とは比較にならない値段設定だ。でも、その分素晴らしいサービスと、感動するレベルのおいしさで、絶対に満足できることだろう。

 場所はBTSスラサック駅の目の前で、昔ながらの洋館全体がレストランになっている。土産物もあって、調味料やグリーンカレーのキットなどもある。ちなみに、キットなどは最近はバンコク都内のスーパーでも売られている。

 タイ料理の教室も開いているので、在住の日本人女性などに人気があることでも知られる。ランチ営業もあるので、基本的にはどんな時間帯でも本格高級タイ料理が楽しめる。

・バーンカニタ https://www.baan-khanitha.com/

 なにを食べてもおいしい、超高級タイ料理レストランの元祖的な存在。日本の皇族がタイに来たときにはここで食べるというほど。今はバンコク都内に5軒くらいあるが、行きやすいのはBTSアソーク駅から徒歩圏内のスクムビット通りソイ23、サートーン通りにある大きな店舗、ナイトバザールで知られる「アジアティーク」の敷地内。

 最初に「ミヤンカム」という料理がサービス(?)で出るのだが、これが素晴らしい。サムンプライの葉(種類は不明)でピーナッツやトウガラシ、ショウガ、干しエビなどを包み、甘い蜜のようなソースで食べる。タイの伝統的な前菜といったところ。こんなにおいしいミヤンカムはどこにもない。

 ちなみに、ボクの両親が初めてタイに来たときに連れて行ったのがこの店だった。父が極端な偏食で、パクチーなんてもってのほかというレベル。とりあえず初日にここに連れて行き、ダメだったら和食店かと思っていたが、やはりタイのパクチーは日本のものと比べて鮮度と味が違ったようで、一発で偏食も治った。

 ほかにも個性的な高級タイ料理店が各地にある。高級店がいいのは、まず味にハズレがないことだ。あとは、英語がばっちり通じるので、タイ語ができない人でも安心ということ。

 店によってはドレスコードがある場合もあるので気をつけたいところ。ただ、それほど厳しくないので、日本でちゃんとしたレストランへ食事に行くような格好なら問題ない。タイはファッションに関してはわりと英国の影響もあって、汚らしい服装は好まれない。特にこういった高級店はそれが顕著なので、そのあたりにも気を配りつつ楽しんでもらいたい。

筆者紹介

高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。

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