第1回目 出かけるときに利用するタイの交通機関

「タイランド・エリート」でタイに移住あるいは長期滞在するメンバーに共通するのは「タイをエンジョイしたい」ということではないだろうか。日本が冬の間だけタイで過ごしたり、大好きなタイ国内の旅行を楽しむ、タイを拠点に世界中を旅して周るという人など。バンコクで暮らし、ショッピングをして、ゴルフに勤しみ、タイランド・エリートの特典を利用してお得に暮らすことを目的とする人もいるでしょう。

そんなときに必ず必要になってくるのが「足」、つまり移動手段。余裕があれば車を買ってしまうこともひとつの手だ。自家用車やタイでの運転についてはまた改めて紹介することにして、今回は移住したばかりの人や、車の運転はしたくない人が利用する、公共の交通機関を紹介する。移住したばかりでもタイを縦横無尽に堪能するためのひとつの参考になればと思う。

意外と隅々まで張り巡らされたタイの交通機関

 タイは基本的に津々浦々まで、公共交通機関で移動できると思っていていい。バンコクは東京と同じで地方出身者が圧倒的に多く、その人たちは故郷から首都に出稼ぎに出てきた。そんな彼らがバンコクに来ることができたのは、全土を網羅する交通機関があったからだ。

 我々日本人も、タイで観光滞在なり長期滞在している間、これを利用しない手はない。それこそ、イサーン地方(タイ東北部)の小さな農村にだって行くことができるくらいなので、好奇心を張り巡らせ、「こんなところで暮らす人の様子を見てみたい」と思ったら、容易にそこに行くことができる。

 次項でタイの交通機関の代表的なものとメリット・デメリットを紹介するが、すべての共通するのが「安い」ということだ。タイの物価指数的に見ても交通機関はどれを取っても基本的には安い。ましてや日本から来た我々からしたら驚異的な安さと言える。

しかも、バンコクなら早朝から深夜まで問題なく利用できる交通機関ばかりなので、昨今の東京で暮らす若者と同じで、わざわざ自家用車を保有する必要だってないとすら感じるはずだ。それくらい便利なので、タイの交通機関はかなり使い勝手がいい。

たくさんあるタイの交通機関とは

 タイで利用できる交通機関は主に下記のものになる。これらのメリットや注意点をそれぞれ個別に見ていく。

・タクシー

・トゥクトゥク

・バイクタクシー

・路線バス

・長距離バス

・BRT

・ソンテウ

・電車

・国鉄

・国内空路

・ボート

・その他

 これらをもっと詳しく見ていこう。

■タクシー

バンコクなら至るところにいる。初乗り料金もずっと更新されず、記事執筆時点でスタートは35バーツ。地方都市はタクシーがないところもあるが、少なくともバンコク中心地で困ることはない。

・メリット

いつでも拾え、しかも安い。最近は新車も増えている。メーター制が90年代に導入されているので、基本的には料金交渉は不要。

・注意点

悪質なタクシーが残念ながらいる。メーターを使わない、運転が乱暴など。日本との違いはドアが自動ではない。英語ができなかったり、道を知らない運転手もいる。

■トゥクトゥク

バンコクや地方の大きな街で走っている三輪タクシー。地方によって形が違う。オープンエアなので、渋滞以外なら爽快感がある。意外とタクシーよりも大きな荷物を積めるので、タイ人では引っ越しや屋台の食材入荷などに使う人が多い。

・メリット

タイらしい乗りものなので楽しい。地方都市のトゥクトゥクはボッタクリ料金がないので安心。

・注意点

座席から意外と外が見えない。交渉制で、バンコクはタクシーより高い(タイ人が交渉しても高い)。オープンエアなので、事故時に危険で、不景気ではひったくりの可能性もある。英語が通じない運転手が多い。

■バイクタクシー

主にバンコクの大通りに対する小路(ソイ)の入り口にいる。本来はソイの中だけだが、タクシーのように中距離も可能。渋滞をすり抜けられるので、急いでいるときに便利。

・メリット

渋滞知らず。各ソイに待機しているので、捕まえやすい。最近はバンコク都の指導で料金目安表が必ずバイタク待機所にある(ただしタイ語表記だけれど)。

・注意点

転倒の危険性。すり抜け時に急にドアを開けられてそこに追突する事故も多発。雨では利用できない。在住日本人の大半は緊急時にしか利用しない人がほとんど。

■路線バス

バンコクを網羅する路線バス。使いこなせれば格安でどこにでも行ける。一番安いのはノンエアコンの赤とクリーム色のバス。地方都市には路線バスはほとんどなく、基本的にはバンコクと隣接する近郊の県だけ。

・メリット

使いこなせればとにかく便利。タイ語が読め、バンコクの地理に詳しければこれほど安くて便利な移動手段はない。

・注意点

路線が多すぎて、バンコクっ子でもすべてを把握している人はいない。日本のように時刻表がないので、いつ来るかわからない。

■長距離バス

バンコクを中心に各地方都市を結ぶ。早朝から深夜まである。VIP、ファーストクラス、2等などがあって、料金差や所要時間が変わってくる。中・長距離にはロット・トゥーと呼ばれる乗り合いバンもある。さらに、国境を超えてラオスなどに行ける国際バスの運行もある。

・メリット

とにかく全土を網羅。少ないところで1時間に1本、多いところだと1時間に5本もあるので、思い立ったら出かけられる。

・注意点

特にバンコクはバスターミナルが分かれていて、北部東北部、南部、東部の3つのターミナルがある。

■BRT

高速交通システムのことで、バスと電車の中間のような存在。BTSチョンノンシー駅からBTSタラートプルー駅間をラマ3世通りを経由してぐるりと南回りで行く。

・メリット

BTS(後述)のプリペイドカード『ラビットカード』が使用できる。

・注意点

ルート内に特にこれといった名所はないので、沿線に住んでいる人か働いている人くらいしか利用メリットがない。専用路線も途中までで、半分以上は一般車線と混じっていて、結局渋滞にはまる。

■ソンテウ

バンコクの長いソイを走る。荷台を改造して座席をつけたトラック型と、小さめのバスがある。トンロー通りのソンテウがよく日本人にも利用される。地方ではタクシーや路線バスの代わりとして活躍する。

・メリット

料金が一律(今はバンコクはだいたい8バーツくらい)。本数も多いし、どこでも好きなところで乗降できる。

・注意点

時刻表がない。ドアは開けっぱなしなので転落に注意。地方だと車を止め、運転手に行き先を聞くまで乗れるかどうかすらわからない(客がいなければ好きなところに行ってもらえる)。ローカルのルールがあるので、慣れるまで難しい。

■電車

バンコクを走るスカイトレイン(BTS)と、地下鉄(MRT)。双方とも延線工事が着々と進んでいて、今や隣接する県にまで行けるようになった。今後も延線や線路線開通が期待される。

・メリット

行ける範囲が広がり、かつ料金が明確で安心。始発は6時前後。終電は深夜0時に一番遠い駅を出る車両なので、延線が続くことで都心の最終がだんだん遅くなってきた。

・注意点

駅によっては辺鄙な場所にあり、現地の治安に注意。わりとシステムトラブルが多発するので、突如大幅な遅延が起こる。

■国鉄

古き良きタイを象徴する交通機関。日本と違って全土を網羅はしていないものの、中にはかつての日本国鉄を感じる部分もあって、長旅に向いている。

・メリット

バンコク郊外から都心に向かう場合、赤バスより安い。長距離も安いが、それなりの料金を払えばいろいろな体験もできる。

・注意点

時間通りに来ない。出発は時間通りでも、終着駅に着くときには数時間遅れがよくある。

■国内空路

LCC(格安航空会社)の登場で、タイ人の国内旅行形態もだいぶ変化。距離やプロモーションによっては長距離バスより安い。レガシーキャリア(普通の航空会社)のフライトももちろんちゃんとある。

・メリット

安いときは安い。そして、早く着ける。

・注意点

空港から市街地までは結局なにか交通機関を使う。プロモーション料金はなかなか予約できない。フライトキャンセルも多い。不人気路線は飛行機が小さく、預け荷物にも制限がかかる。

■ボート

バンコクだとセンセーブ運河の運河ボート、チャオプラヤ河のエクスプレスボートがある。いずれも距離に応じた料金設定でありつつ安い。

・メリット

料金が安く、渋滞知らず。王宮やワット・ポーなど旧市街観光に便利。

・注意点

運河は臭い。朝夕のラッシュアワーは定員オーバー気味でちょっと不安。

■その他

ほかには、一部観光地などで見られる三輪自転車のサームロー、バンコクの中心エリアにあるスクムビット通りソイ39だけを走る、日本の軽トラックを改造したタクシーのシーローなど。

・メリット

サームローは田舎の雰囲気を味わえる。シーローは利用者の大半が日本人なので、中には日本語ができる運転手もいる。

・注意点

サームローは料金交渉制で、料金は高め。

筆者紹介

高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。

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