タイの自宅でWi-Fiを置く場合、まずは建物次第であることと、通信速度の速いプロバイダーと契約することが大切だ。ただ、通信速度は建物や地域によっても違うので、近辺で最も強い電話会社をみつける必要もある。
それからもうひとつ、ルーターをいいものにするという方法もある。たとえばタイのNTTのような国営電話会社『ナショナル・テレコム』は回線契約時にルーターも選べる。ただ、これが本当に高性能かどうかはわからないので、詳しい人が身近にいれば一緒にルーターを別途買うといい。
では、どこで購入するのか。今回はWi-Fiに限らず、IT関連機器をタイで購入することに関してのメリットを見ていきたい。
ルーターが売っている場所はバンコクの秋葉原
ルーターなどはタイ国内のIT機器を売る店ならどこでも置いている。パソコンやスマホの端末を売っている店というよりは、配線やらマウスなどの周辺機器を売っている店に多い。バンコク都内だと、かつてバンコクの秋葉原などといわれた『パンティップ・プラザ』内に多い。BTSでいうとラーチャテーウィー駅か、チットロム駅が徒歩圏内だ。あるいは、ラチャダーピセーク通りの『フォーチューン・タウン』にも周辺機器のショップがある。こちらの最寄りは地下鉄MRTラマ9世駅になる。
ボク自身はそのあたりに詳しくないのでなんとも説明ができないが、詳しい人にいわせればルーターだったり配線を変えることで多少通信速度を上げることはできるらしい。これらはわりと安いので、興味ある人はこういったところでパーツを買い揃えてもいいのかもしれない。
タイは物価が安いというイメージがあるが、ことスマホに関してはそうでもない。スマホ端末そのものも安くないし、電話料も場合によっては日本と変わらないか高いくらいだ。しかし、周辺機器は比較的安い。これは中国製が多いからという事情もある。さすが中華系タイ人も多いので、彼らが中国にいる親族とビジネスをして、無名のブランドなどを持ち込んでいる。そのため、日本以上に変なものを掴まされないように注意が必要になるが、日本よりも安いものが少なくない。
ルーターも然りで、いろいろな種類があるので、詳しい人を連れていくか、店の人に聞いて選ぶといいだろう。
そうそう、前回の電話会社の紹介の項目で書き忘れたが、タイの電話会社のサービスは結構よくて、まず各社が4桁だけの短縮ダイヤルを持っていてすぐに電話がかけられるというメリットがある。さらに、電話をしても問題が解決しない場合、すぐにエンジニアが来てくれることもすごい。電話で説明してもらっても埒があかないと、すぐさま(あるいは1時間2時間後には)エンジニアが来て、直接見てくれる。このフットワークの軽さは特筆だ。
ただ、タイの場合、自宅に問題がなくて、建物そのものにも問題があることが多い。だから、電話で聞いても解決しない。そして、そうなるとエンジニアが来てもどうしようもない。でも、これだけさっと動けるマンパワーがあるのはタイらしい。
建物といえば、タイはいまだに停電が多い。結局建物の設備の問題で、ノートパソコンやスマホならいいが、電源をコンセントで取っているデスクトップなどは要注意。ルーターを売っている店で、予備のバッテリーを買っておくべきだ。コンセントからバッテリーに繋ぎ、それを経由してパソコンに繋げば、突然停電になってもパソコンのデータは守られる。ボクはこれで会社員時代に何度も泣かされてきた。
タイでIT機器を買うのは安い? 高い?
さて、タイのショップでIT機器を購入する場合、日本と比較してどれくらいの値差があるのだろうか。これは一概には言いづらく、輸入時などの為替レートの違いなども影響する。タイと日本の対米ドルレートの違いもあるので、簡単には言えない。
ただ、具体的に知りたい方のために、一応、スマホの人気ブランド『iPhone』で調べてみよう。意外と同じブランドでもまったく同じ機種を各国に置いているわけではない。タイはアンドロイドが主流だが、iPhoneは全世界で基本的にはスペックが同じなので比較しやすい。
■iPhone13 Proの価格(2021年9月27日時点)【為替レート:1バーツ≒3円】
・タイの価格:128,370円(38,900バーツ)
・日本の価格:122,800円
※いずれも日本とタイのアップル社の公式サイトを参照
このような差になる。取材時点では日本の方が安いけれども、レートによっては逆転する。つまり、ほとんど同じ値段ということ。思っているほど安くないでしょう? ただ、タイはアンドロイドのスマホが主流で、サムスンのスマホが人気だったり中国ブランドも多いので、全体的な平均値としてはスマホ端末は日本よりはほんの少しだけ安い印象だ。
この価格帯をどう捉えるかは人それぞれだと思うが、もしタイで主に使うのであれば、やはりタイで購入するべきだし、日本で使用するならば日本で買った方がいい。というのは、前連載で紹介したように日本は通信規格があって、日本の認証を受けている「技適マーク」がない場合は90日を超える滞在だと観光とは認められず、その認可のないスマホを使うことは違法になる。
なにより、万が一の故障を考えると、補償の範囲もそれぞれの国に合ったものになっているので、タイで使うならタイで買うべきだろう。タイはご存じのように常夏で、汗をかいてスマホを使用すると水分や湿気が機器内に入り込むことがある。また、雨季になるとやはり水が入ってしまう。さらに、暑い時期は商業施設内のエアコンによる温度差が激しく、結露やなんらかしらの不具合の原因にもなりやすい。いろいろな問題を考えると、保証される国にいた方がいいに決まっている。
結局、値段の差はそのあたりのさじ加減になるかと思う。感じ方は人次第でしょう。
タイ語版キーボードが意外とかっこいい
タイでIT機器を購入するメリットはもうひとつ、やはりタイ語版であるということをボクは挙げたい。スマホは設定から弄れるので関係ないが、パソコンはキーボードの日本でいうカナの部分がタイ語になっているので、長くタイに滞在することになろう「タイランド・エリート」メンバーはタイ語を学び、それをメールなどで打って返すことになるかもしれない。そんなときにタイ語キーボードは便利だ。
デスクトップなら、IT機器ショップでキーボードだけ買ってくればいい。タイ語キーボードは日本の規格とやや異なるためか「@」の場所などが違う。それくらいなので、特に大きな設定をすることもなくすぐに使えるようになる。
日本のパソコンをタイで使うときは、ウィンドウズならタイ語フォントを導入すればタイ語をタイピングすることが可能だ。ただ、配置がわからないのでIT機器ショップにてキーボードのシールを買ってきて貼るといい。キーボード丸々セットになっていて、キーの並び順にシールも並んでいるのですぐにセットできる。
パソコンも日本より安いものがある。注意が必要なのは、前述の通り中国製は見た目に反して中身が劣悪なこともある。同時に、いまだニセモノもあるという点。パソコン自体は大手ブランドの本物であるものの、ウィンドウズやエクセルなどのソフトが海賊版だったりすることがいまだにある。これがわりと大きなパソコンショップ・チェーンでも堂々と売られていたりするので、異様に安い場合は注意が必要だ。店員に訊くと本物か海賊版か教えてくれる。海賊版使用は、使用そのものも違法だし、なによりアップデートができなくなるので使うべきではない。
注意点はあるものの、タイ語版キーボードなどはタイ語を打つには便利だし、なにより、日本に持ってきたときにちょっとほかと違うパソコンで、なんか優越感があったり。そんなメリットがある。
高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。