第3回「タイのキャリアがあるとさらに充実するWi-Fi利用環境」

 タイはとにかくWi-Fiに関しては日本よりも優れている。タイの携帯キャリアのSIMを保有していなくても、Wi-Fiが繋がるスマホやパソコンがあれば、あっという間にネット接続できる。空港にも一応無料Wi-Fiが設置されているので、とにかく着いたらすぐにスマホが使える。

 今回はそんなタイのWi-Fi環境に関して、タイのキャリアを使っていたらどうなのか、また自宅にWi-Fiを設置する場合はどうするのかを紹介する。

キャリア各社の無料Wi-Fiが商業施設などにあるが…

 まず、タイの携帯キャリアは前回の連載で紹介した通り、下記の3社になる。

・AIS:http://www.ais.co.th/en/

・true move H:http://truemoveh.truecorp.co.th/?ln=en

・dtac:http://www.dtac.co.th/en/home.html

 これらと月極契約をするか、プリペイド式で利用するかはそれぞれだが、いずれにしても各社の通信環境を利用してネット接続できる。公共の無料Wi-Fiを使用するより通信速度が速いので、タイのキャリアがある場合は外出中にWi-Fiを利用する必要がほぼない。必要なのは、通信量を大量に食ってしまう大きなファイルをダウンロードするときくらいだろう。

 これら3社は独自に無料Wi-Fiを各所に設置している。よく見かけるのは空港と商業施設だ。空港にも公共の無料Wi-Fiがあるのだが、確かアクセスポイントは『AIS』と『true move H』だったはずだ(『dtac』は未確認……)。携帯キャリアが代行しているのだろうか。

商業施設だとエスカレーターや各所の見えやすいところにWi-Fiの立て看板がある。これらを見かけたらそのキャリアのSIM利用中なら自由にWi-Fiに接続できると思っていい。ただ、各社によって接続方法が違っていて、専用アプリを使用したり、事前登録が必要など様々なので、そこは各社に確認が必要だ。いずれにしても、通信制限がかかっていて速度が遅いなどの理由がない限りは、キャリアの無料Wi-Fiは速度が通常のものよりも遅いので、あまりおすすめはしないが。

 キャリア絡みだと無料Wi-Fiよりもプロモーション看板をよく見かける。QRコードを読み込んだり、特定の番号にかけるとその店の特別サービスが受けられたり、割引になったりする。これが意外と使えるので、利用頻度によっては月極の基本料を超えるのではないかとさえ思う。QRを読み込む際にはタイ人はだいたい『LINE』を利用するので、その際には結局ネット環境が必要になる。

自宅Wi-Fiは電話会社などで契約する

 一般の飲食店にあるWi-Fiは、携帯キャリアではなく、主に日本のNTTに相当するような電話会社の回線を利用した通信環境下で運用されている。商業用ではなく、基本的には家庭用なのかと思うが、少なくともキャリアの無料Wi-Fiの不調時よりはずっと速い。これらは一般家庭でも導入できるので、「タイランド・エリート」で移住した人も契約できる可能性はある。

ただし、タイランド・エリートのメンバーが電話会社の回線契約をできるかどうかは、前連載時に紹介した「携帯キャリアで月極を契約できるかどうかは担当者次第」ということと同じだ。タイの場合、こういった月極の支払い契約は基本的に労働許可証がないとできないので、担当者がどう判断するかは運次第になる。

 あるいは、住まいの賃貸契約書があれば契約できるケースもあるらしい。さすがに自宅Wi-Fiは物件がなければならないので、賃貸契約書か、購入したコンドミニアム(分譲マンション)の住宅登録証などがあれば契約できるという情報もある。主に12ヶ月契約が主流なので、いずれにしてもちょっとした滞在よりは長期滞在者向けになりそうだ。

 契約の前に確認しておきたいのは、その建物自体がどの回線を設置できるかである。下記の電話会社(あるいはプロバイダー)は通信速度の速いファイバー回線や昔ながらのADSL回線を用意している。これらは建物によって選択するものなので、事前に把握しておいた方がいい。とはいえ、あちらもプロなので住所をいえばどちらが使えるかは向こうが把握している。

 もし、自宅にWi-Fiを導入する場合、基本的にこの4社に絞られる。

・National Telecom:https://www.ntplc.co.th/

・3BB:https://fiber.3bb.co.th/

・true online:https://trueonline.truecorp.co.th/

・AIS:http://www.ais.co.th/en/

 一番上の『ナショナル・テレコム』は、日本のNTTのような会社だったTOTと、国際通信を主に担っていたCATテレコムといういずれも国営の通信会社が2021年1月に合併してできた。ネット回線は主にTOTのネットワークが主体だったので引き続きこちらが使われる。通信速度はタイでは速い方なので、最も無難な契約先だ。ファイバー回線やADSL回線が使えない物件でもVDSL回線というものが利用できる。

『3BB』は通信速度が速いことで定評がある。ただ、建物によって速度がだいぶ違うという情報もあるので、事前に調べる必要がありそう。在住日本人だと以前のTOTか、後述のtrueで契約する人が多いので、正直3BB社の情報は少ない。

 スマホのキャリアでもあるAISとtrueにも家庭用のWi-Fiが設置できるプランがある。AISはファイバー回線のみなので、契約者ではなくむしろ物件によりけり。trueは『true online』というグループ企業でのWi-Fi契約となる。trueは衛星放送も持っているので、スマホ、Wi-Fi、衛星放送をまとめて契約すれば支払い先をまとめることができるというメリットがある。この衛星放送には別料金だがNHKもあるので、日本人には注目だ。

ネット速度を重視するなら都心に住むこと

 タイの場合、Wi-Fi設置は建物によって選べる回線が異なってくる。また、外国人が必ずしも契約できるかどうかはその時世によって変わるので、正直なんとも言えない。また、いずれにしても、言葉の問題が出てくる。自分で契約することが難しそうと思うなら日系のサービス会社などが設置などをしてくれるので、そこに頼んでもいい。

 基本的に12ヶ月契約が多いので、タイランド・エリート・メンバーが日本の冬だけタイに滞在するとすると、ちょっと割に合わない。そういう場合は、携帯キャリア各社が用意している携帯用ルーターを使うことも可能だ。ただ、タイのキャリアのSIMがあるならあまり意味がなく、たとえばAISの携帯用ルーターをひとつ持って、日本のSIMのスマホを使う家族とWi-Fiを共有するなどがベターかもしれない。滞在期間によっては日本やタイ国内にレンタルの携帯用Wi-Fiルーターもあるので、そちらを検討するのもひとつの手だ。

 中期滞在スタイルの場合、物件を購入するよりは賃貸になるだろう。その場合、コンドミニアムなら分譲オーナーがサービスでWi-Fiを入れているケースもある。そうすれば自分で契約しなくてもいい。

あるいはアパートやサービスアパートの場合、建物丸ごとで契約していることもある。このケースでも個別に契約する必要はない。ただ、昔ながらのアパートは別料金になっていることがある。しかも、それがプロバイダーと直接契約しているのと大して変わらない金額だったり。こういう悪徳アパートは通信速度が異様に遅いこともしばしば。それであれば先のように携帯キャリアのポータブルなルーターを使った方がいい。

 ネット速度を重要視する人は、とにかく新しい物件、そしてバンコク都心に住むべき。ボクはバンコクと隣の県の境に住んでいるのだが、このコンドミニアムは昔の通信設備しかないためにファイバー回線を引くことができなかった。

 また、日本では信じられない話だが、タイは雨が降ると通信速度が低下する傾向にある。バイク便などが雨宿りし始めて経済スピードが若干落ちるのと同時に、ネットまでもが重くなって、メールが送れなかったり動画サイトが観られなくなったりする。ボクの住まいの建物外にある通信機械が博物館に置いてあったものとほとんど同じ形状だった。昔ながらの装置だからか、雨が降ったり雷が鳴るとだいたい使えなくなる。もしネット速度が気になるという人は、物件選びの前に通信会社に行って回線の状況を教えてもらうといいかもしれない。

筆者紹介

高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。

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