第4回「SIMカードはここで入手する」
端末の購入先は前回の記事で理解していただけたと思う。今回はその端末を利用するのに欠
かせないSIMカードの入手先について言及したい。タイの携帯キャリアは下記の3社だ。
・AIS:http://www.ais.co.th/en/
・truemoveH:http://truemoveh.truecorp.co.th/?ln=en
・dtac:http://www.dtac.co.th/en/home.html
これらのキャリアをどう選ぶべきか、またどんなSIMがあって、なにを選ぶべきかをこの回
で知っていただければと思う。
タイのSIMの基本とキャリアはどう選ぶべきか
まず、タイのSIMカードには大きく分けて課金制のプリペイド式、月額で料金を支払うポス
トペイド式がある。また、プリペイドには音声通話もできる通常のもののほか、近年はスマホ
専用のネットしか使えないデータSIMもある。
プリペイドは銀行口座が不要なので、タイの学生なども利用する。外国人旅行者のほとんど
が利用するのもこのプリペイド式だ。メリットは簡単に入手でき、必要額だけチャージできる
ことだ。タイではチャージすることをトップアップという。
プリペイドのデメリットは通話料が月額制より高く、課金ごとに有効期限があって、それを
過ぎると番号そのものが消滅する。たとえば「タイランド・エリート」のメンバーがこれを使
うとして、一時帰国の期間が長くなる場合は不向きかもしれない。有効期限は課金額によって
違う。
ポストペイドは月額制なので、日本の携帯キャリアと同じように利用できる。月額はいろい
ろプロモーションがある。一度契約しても自由に変更できるので、しばらく使ってみて合わな
いと感じたら安いものに変更できる。メリットは支払いが楽であること。デメリットは一方で
支払いを忘れやすいところか。
先のキャリアのURLを見れば、月額は大まかに出ている。基本料を安くしながらオプション
で必要なものだけつけ足したり、基本料は高くても通話無料分がたくさんなどいろいろあるし
、期間によってプロモーションが違う。先述のように一度契約すればキャリアオフィスですぐ
に変更できる。たとえば月額を払いに行ったときにその月の使用量を聞いて、自分に合った月
額プロモーションを紹介してもらうということも可能だ。
キャリアそのものも選び方は最終的には好みだが、ボク個人の意見としては下記かなと思っ
ている。
・AIS:老舗で安心感が高い。全土で使いやすいので、他県移動などが多い人におすすめ
・truemove H:携帯だけでなく衛星放送や自宅でネット回線もある。利用しているなら、支払
先の一元化という点でおすすめ。また、わりと地方が強いとも言われる。国境付近だとか奥に
行くほど強いと言う人もいる
・dtac:料金が安いイメージ。バンコク都内の移動しかしない人には十分なキャリア
プリペイドはショップやキャリアオフィスで
プリペイドは簡単に入手可能だが、今はショップやキャリアオフィスで入手する。以前は
ンビニでも売っていたのだが、今はできないところがほとんどのようだ。
というのは、タイのマレーシアと国境を接する深南部3県は2000年代頭から爆弾テロなどが
多発するエリアで、テロの遠隔起爆操作にプリペイド携帯電話が使われているということで
、10数年前からプリペイド購入時に身分証明証を提示しなければならくなった。販売者はその
コピーなどを関係各所に送る必要があって、コンビニではそれができないからということにな
ったらしい。
とはいえ、犯罪を犯すわけではないので、我々日本人の場合はショップに行ってパスポート
を提示すれば簡単に購入できる。難しいことではないが、パスポートは忘れずに。プリペイド
には購入時にすでに電話料金が含まれているので、SIMを入れたらちょっとした設定だけです
ぐに使えるようになる。
ショップやキャリアオフィスに複数のプリペイドSIMの在庫があれば、番号を見せてくれて
選ぶことができる。値段はこみこみの通話料などで変わるがデータSIMの安いもので50バーツ
くらいから。「MBK(マーブンクローンセンター)」などの商業施設にある個人ショップなど
には数千バーツから数万バーツのSIMもある。なぜなら、1111など、タイ人が言う「きれいな
数字」のプリペイドSIMにプレミアム価格がついているのだ。9はタイ語でガーウと読み、歩む
のガーウと同じ発音のために縁起がいい数字とされる。そのため、9が多くつくほど値段は上
がる傾向にある。
プリペイドは要するにSIMを仕入れれば販売できるわけなので、個人ショップはいい番号を
買い占めて高値で販売する。購入側としてはプリペイドにそんなにお金はかけられないとおも
うかもしれないが、実はプリペイドはキャリアオフィスに行けば月極に変更できるので、こだ
わりのある人はプリペイドで購入して契約内容を変更しているようである。
プリペイドは3社とも課金をトップアップと言い、いろいろな方法でできる。キャリアオフ
ィス、スーパーやコンビニのレジ、支払いアプリ、キャリアの公式アプリか公式サイトだ。ト
ップアップの最低料金はAISの公式アプリの場合は5バーツからで、最大で1500バーツくらい。
それほどスマホを多用しない人は必要分だけ課金できるので、10バーツ20バーツくらいしか入
れない人もいる。
先に有効期限の話を書いたが、SIMは購入時の時点で有効期限が決まっていて、AISの場合は
30日くらいと思っていていい。高いほど期間は長く、最長で1年のものもあるようだ。そして
、期限を過ぎると番号そのものが消滅するのだが、トップアップすることで延命できる。目安
は200バーツで1ヶ月ほど延長できる。AISは1500バーツのチャージで1年間は期限が延びるとか
。
おすすめのトップアップはやはりアプリなどでやってしまうことだが、苦手な人はコンビニ
のレジに行くといい。レジで社名と課金したい額を告げるとレシートが出てくる。以前はカー
ドを購入して裏を削るとコードが出てきた。今はレシートに出てくるコード番号を、各キャリ
アが設定している番号にかけて(だいたい*マークから3桁の番号を押す)、コードを打ち込
むと課金される仕組みだ。コンビニがおすすめなのは、タイ人は優しいので、やり方がわから
なければスタッフにスマホを差し出すとやってくれる。
月額はピンキリ 必要書類は?
ポストペイドはキャリアオフィスに行って契約する。外国人の場合はパスポートと労働許可
証を持参することが原則だ。確約はできないが、キャリア側も顧客獲得が目的でもあるので、
タイランド・エリートのメンバーあるいは観光以外のビザであれば、担当者によっては労働許
可証なしでも可能なはず。ここは各社の窓口で聞かないといけない。わりと政治や治安的な時
期にも左右されるので、確実に契約できるか否かのそのあたりはなんとも言えない。
ポストペイドの月額はピンキリだ。dtacはなんのオプションもない基本料が安く、必要なオ
プションを上乗せしていくタイプがある。まあ、各社のSIMは基本料が高い場合は毎月の通話
料や通信料の無料分が多かったりなどと内容は様々。ビジネスマンでスマホを多用する人は
1000バーツ超の料金にするし、ボクのように音声通話はほとんどなし、ネットも自宅でWi-
Fi、外に出るときだけたまに使うケースだと月額400バーツ程度でも十分。これは人それぞれ
でしょう。
ポストペイドの月額量はキャリアによって違うが、たとえばAISだと399バーツからというイ
メージ。ハードユーザー向けの高額な月額となると最大でも2000バーツくらい。
通話や使用量のデータは全部オフィスの端末にある。毎月通信料が高い気がしたら、窓口に
行って現状のプロモーションが自分に合っているか訊くこともできる。相手側には通話料金や
データ通信使用量のデータがあるし、月々の平均値もすぐに出てくるのですぐに回答をもらえ
る。それに合わせてほかのプロモーションに替えることもできる。プロモーションは発表から
契約できるまでの期限があるが、基本的には一度契約したら変更しない限りはずっとその料金
が適用される。
ポストペイドのメリットは月に1度払うだけだ。毎月登録した住所に請求書が来て、記載さ
れている有効期限までに支払えばいい。支払いはキャリアオフィスの窓口に行ってもいいし、
コンビニやATMなどからも支払いが可能。ただ、たまに忘れることもある。日本はボクはわか
らないが、少なくともAISの場合、支払いを忘れても2ヶ月くらいは猶予があって、すぐに停止
されることはない。また、ショートメッセージや電話で督促も来るので、結果的に忘れること
は少ない。
自身がない人には銀行引き落としも選択肢にある。ただ、タイの場合は書類を持って銀行で
手続きをするので、その月から引き落としが始まらない。さらに、キャリアか銀行に問題があ
ってその月の料金が引き落とされなかった場合、その途端に引き落としの契約が勝手に停止さ
れる。つまり、知らないうちに引き落としがされなくなり、未払いが発生していることもある
。この点は注意したい。もし引き落としを再開したい場合はまた同じ手続きをして、当月は窓
口などで払ってということをする。このあたりはちょっと不便だ。
日本人経営ショップや国際SIMもおすすめ
スクムビット通りソイ39に日本人向けの携帯ショップがある。日本人経営で、日本人が常駐
している。今はここだけでなく、数ヶ所、ショップがあるはず。端末も購入できるし、通話料
も普通のキャリアにはないような仕組みがあって、特定の番号にかけたり、定められた使い方
をすると通話料がかなり安くなる。AISとtruemove Hの電波を使っているので、通信そのもの
のクオリティーも悪くない。さらに、日本に帰国する際のことなども相談できる。在住が長く
なると日本のSIMがない人もいる。そして、日本は日本のキャリアSIMがないと途端にネット難
民になってしまうので、そうならないために相談できるメリットは大きい。
帰国といえば、バンコクのスワナプーム国際空港はいろいろな国に出かけるに便利である。
だから、タイランド・エリートで移住をしてもずっとタイだけにいるわけではなく、いろいろ
な国に遊びに行くという楽しみもある。そんなとき、結局改めてSIMカードに悩む羽目になる
。
しかし、たとえばAISの国際SIMカードは非常に便利だ。『SIM2FLY』という名称で販売され
、海外をアジアや欧州、アメリカなどいくつかに分けて値段が設定されている。今はどのラン
クも5G対応のSIMになっているので、海外使用でも通信スピードに問題はない。一番安いもの
で399バーツから。各社海外用SIMがある。
この海外旅行用のSIMのメリットはスマホ端末のSIMを交換するだけで、現地に到着したらす
ぐさま利用できることだ。これまで各社は海外使用のために特別なパッケージがあって、SIM
を交換しなくてもそのまま現地でネットが使えるというサービスがあった。ただ、7日間、10
日間、30日など限定で、長く旅行するには不便だし、なによりもパッケージ料金が高かった。
その点、この海外旅行SIMは交換が必要になり、その間はタイの電話番号が使えないものの
、最初の購入金額以外に料金は発生しないし、SIMの有効期限までずっと使える。さらに、海
外滞在中や帰国後に一定期間までなら再課金で同じSIMを次の旅行でそのまま利用できる。ト
ップアップはネットからできるので、海外滞在が長くなっても安心だ。そのため、実はAISの
SIM2FLYは日本のネットでも売買されるほど人気が高い。日本の国際SIMよりも安く、便利だか
ららしい。
このSIMはキャリアオフィスか空港で買える。AISの場合、キャリアオフィスに在庫がないこ
とも多々あるので、スワナプームで買うことをおすすめする。出発フロアなら少なくとも2か
所は販売所がある。使い方もその場で説明してくれるくれるので、安心。確か設定方法など日
本語の説明書もあったはず。
このように、タイのSIMカードは日本と比較して外国人にとっても自由度がかなり高い。ま
すますタイ生活にスマホが欠かせないということになる。
高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。