1回目「外国人でも物件探しは問題ナシ」

『タイランド・エリート』であれ、その他のビザであれ、タイに移住となったら避けて通れないのは物件探しだ。生活の拠点をみつけることは重要課題になる。なぜなら、その拠点がその後の生活の良し悪しを決定づけるからだ。万が一選択に失敗すれば、タイ生活が一気につまらないものになることは間違いない。

 ここではそんなタイ、特にバンコクなど主要都市における住まいの探し方を紹介していきたい。日本とはちょっと違う習慣もあるので、そのあたりを把握していれば選び方を間違えることはないはずだ。

まずは理想の条件を全部洗い出す

 まず、大切なのはどんな場所に住みたいか。土地勘がないとなかなかアイデアは浮かばないかもしれない。そんなときはどんな条件が外せないかを自分の中で挙げていく。すべての条件に当てはまる物件があればいいが、妥協できる点は妥協し、妥協してはいけない部分は絶対に外さない。そうすることで選ぶべき物件や地域が浮かび上がってくる。

 条件洗い出しが大切なのは、タイの物件がバリエーション豊かであることが理由になる。特にバンコクは地域によってその特徴が大きく異なる。いくつもの物件を内見しているうちにわからなくなってきて、自分の希望がブレてくる。そうならないためにも条件のピックアップはあらかじめしておいた方がいい。この条件に従って物件探しをすれば、1軒1軒の見学がより有意義になる。次の住まいを探すときの参考にもなる。漠然と内見するよりもずっと意味が出てくる。

 また、タイでは家賃の水準によっては個人で探すよりも、賃貸不動産仲介業者に紹介してもらうことも当たり前になってくる。このとき、事前に希望する条件が揃っていれば業者側も紹介しやすい。

日本人の場合は日本人常駐の不動産仲介業者に依頼することが圧倒的に多い。しかし、実際には欧米人向けや韓国人向けなど様々。国民性が如実に表れるようで、取り揃えている物件も異なるため注意したい。たとえば、欧米人の独身男性で夜遊びを好む人は歓楽街の中にある物件に住んだりする。深夜まで大音響の騒ぎで、一般的な日本人は敬遠する物件の方が好まれるらしい。一方日本人は静かな物件を好むので、バンコクのスクムビット通りのソイ(小路)ではかなり奥まったところが人気になる。

条件が揃っていれば、業者も紹介物件を絞り込めるので話が早い。移住時点で物件を確保しているのならともかく、とりあえずタイランド・エリートなどで長期滞在の許可だけもらい、身ひとつで乗りこむというのであれば最初はホテル住まいになる。タイだと民泊が法令的にグレーゾーンで件数はかなり少ないし、あまり便利な場所にないというデメリットもある。当然ながらホテルだと費用がかさむので、なるべく早く引っ越したいところ。素早く拠点を確保するためにも、条件付けは第一歩と考えよう。

外せない条件にはどんなものがある?

 その条件にはどういったものがあるだろうか。バンコク移住を前提に考えた場合、多くの人にとってマストな条件といえばまずは下記になるはずだ。

■物件探しの外せない条件の例

・予算(希望の家賃水準)

・治安

・物件の広さ

・交通の利便性

 予算は、まずタイ人が暮らすアパートでもいいのなら6000バーツ(約21000円)くらいからと見る。これより安いとトイレ・シャワーが共同だったり、別の回で紹介するが法令的な事情で外国人は入居不可物件もある。タイにあまり精通していない場合は2万バーツ前後(約7万円)を予算に考えるべきだ。この家賃設定以上ならそこそこにきれいなコンドミニアム(マンション)でキッチンもついているし、リビングと寝室がきっちり分かれていて暮らしやすい。日本人向けならばスクムビット通りのアソーク交差点からエカマイ通りくらいまでに物件が集中するので、この辺りを都心と考えれば、都心ほど高く、遠いほど家賃は安いことは憶えておきたい。

 治安は郊外に行けば行くほど悪いと思った方がいい。ただ、実際には思っているほどではないけれど。郊外だと外国人が少ないので、英語や外国人発音のタイ語が通じにくくなる。思わぬトラブルが起こりやすいので、治安を含めて気をつけるべきであり、よほどタイに慣れているかタイ語に自信がない限りはやめておこう。いずれにしても、郊外になると商業施設やショッピングスポット、電車の駅が遠いので、車がないと生活しづらい。

 物件の広さはすなわち物件スタイルにも関係してくる。次回で詳しく紹介するが、バンコクだとアパート、コンドミニアム、一軒家、タウンハウスといったスタイルが選択肢に出てくる。世帯人数、予算、住みたいエリアによっても選択できるタイプや広さが変わる。

 最後の利便性だが、バンコクはタクシーが多いので、都心はあまり深く考える必要はない。ちゃんとしたコンドミニアムだと送迎車を用意しているので、たとえソイの奥で自家用車のない生活をしていても不便を感じない。ただ、場所によってはタクシーが来ないこともあるので、このあたりは実際に足を運んで様子を確認した方がいいでしょう。スマートフォンの配車アプリも使いこなせるといい。

気楽に引っ越せるのも大きな魅力

物件探しの条件で、近隣の飲食店や小売店の数を気にする人もいるかもしれない。ただ、これに関してはさして問題はないと思う。屋台やコンビニがあった方が便利ではあるけれども、外出のついでに買ってくればいいだけのこと。あればいいな、くらいで十分だ。そもそもタイは人が集まるところに飲食店が必ずあるもの。タイ料理しかないけれども、そのあたりは心配無用だ。

アパートは外国人不可のところがバンコクでも少なくないが、基本的にはどこでも簡単に借りることができる。どんな物件でもパスポートと保証金、当月の家賃があればすぐに入居できる。ほとんどの物件が家具付きなので、細々したものだけ大型スーパーなどで購入すれば問題ない。この気楽さがいい。

しかも、タイの場合は保証金はあくまでも家賃の不払いに対処するためのもので、全額とは言わないが、ほとんどが返還される。長くなるほど引かれる修繕費が高くなるけれども、それでもかなりの金額が返ってくる。すなわち、次に引っ越しもしやすいのもまたタイの住まいの魅力だ。

冒頭で物件選びはその後の生活を左右するとした。物件によっては半年、1年が契約期間で、この期限前に引っ越しをすると保証金が全額没収となることはある。契約内容は事前確認が必要だが、それさえ把握していれば引っ越しが気楽にできる。実際、在住日本人もわりと多くの人が1年間に1回ないしは2回は引っ越しをする。よほど気に入ったエリアの場合は何年も住み続けるが、気分転換で引っ越しができるのはタイ生活の彩りを豊かにすること間違いなしだ。

次回ではタイの住まいの形態の詳細や、バンコクのエリアごとの特徴を簡単に紹介する。これらを参考にバンコク暮らしをする場合の条件ピックアップに役立ててほしい。

筆者紹介

高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。

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