第4回 日本人ならここで加入する
連載第3回においてタイで保険に加入することのメリットを紹介したが、ではタイのどこで保険に加入できるのかという疑問も出てきているでしょう。ここではどこで保険に加入するのがベストなのかを検証していきたい。
●タイの人気保険会社はここ
まず、前回にも少し触れているが、タイの保険外交員は許可制になっているので、「パートでとりあえずやっています」という人はまずいないので安心だ。保険外交員になるためには登記官に認められなければならないし、定期的にセミナーや講習が各保険会社で行われる。そのため、知識も豊富であるし、詐欺に遭うようなことはまずないと思っていい。
代理店も同様に許可を受けることが大前提で経営されているので、基本的にはどこで契約しても問題はない。もちろん例外はあって、ここで契約するのは注意ということもある。それは後述したい。
そんなタイにおける生命保険会社で、特にタイ生命保険市場で売り上げの大きなのは下記の保険会社になる。上から順に売り上げが大きな企業だ(2020年度の実績)。
・AIA : https://www.aia.co.th/th/index.html
・FWD : https://www.fwd.co.th/en/
・Muang Thai Life : https://www.muangthai.co.th/en
・Thai Life : https://www.thailife.com/
・Krungthai AXA Life : https://www.krungthai-axa.co.th/en/
・Prudential Life : https://www.prudential.co.th/corp/prudential-th/en/
・Bangkok Life : https://www.bangkoklife.com/en
日本にも支社がある国際企業もあれば、グルンタイといった銀行が運営するところもあるなど、企業にもバリエーションがある。もちろんこれだけではなく、優れた保険会社は複数あり、加入する側は選択肢が多種多様なのがタイの保険市場の姿でもある。
どの窓口で契約するのが望ましいのか
加入するならどこでするべきか。窓口がそもそもどこにあるのかと思う方もいるだろう。上記の保険会社だけでなく、全般的にどこで保険に加入できるのかを見ていこう。
・直営窓口
大手保険会社は大きな商業施設に窓口を持っていることが多い。タイの商業施設は問屋街のように同業種が同じフロアやエリアに集められている傾向にあるので、銀行近辺に行くとみつけやすい。高級ラウンジのような構えで窓口を置いている保険会社が必ずある。こういった窓口は加入後の諸々の相談も受け付けているので、あらかじめ場所を把握していることは有利かもしれない。
・保険外交員
保険外交員とコンタクトを取り、直接契約する方法もある。SNSなどで顧客を探している外交員もいる。あるいは、知り合いに紹介してもらう手もある。日本人で加入している人もいるので、そういった人から紹介してもらえば、特に外国人に慣れた外交員とも考えられるので、話はスムーズだろう。外交員は保険料の中からマージンが支払われるので、意外とアフターケアもしっかりしている。
・商業施設の特設会場
外交員と直接コンタクトが取れない場合、商業施設のイベント会場、あるいは通路などで代理店などがブースを設置していることがある。常設ではない点はデメリットだが、こういったところで保険外交員と知り合いになって、そこで加入するという手もある。こういった特設会場で契約すると、ちょっとしたグッズがもらえたりもする。
・保険代理店
商業施設の窓口は保険代理店のケースもある。また、街中の路面に店を構えているところもある。目印は各保険会社のロゴを大きく掲げているところだ。代理店も許可制になっていて、毎年免許更新があるので、しっかりしたところが多い。
・保険ブローカー
代理店は保険会社1社と契約してその会社の保険商品だけを販売するところで、ブローカーは複数の保険会社の商品を扱っている。メリットは、複数の会社の商品を同時に比較できる点だ。生命保険だけでなく、自動車保険や損害保険も扱っていたりするので、ボクが利用するのはどちらかというとブローカーだ。ボクの場合は主に電話でのやり取りになるのだが、条件が揃えば書類を持って自宅まで来てくれる。昨今はクレジットカードの読み込み機器も持参するので、カード払いもできる。
・電話・アプリ
こういった時代なので、昨今は大手だと4桁の電話番号で繋がるホットラインを設けていたり、アプリで契約もできる。日本語がないのでちょっと難易度が高いのがデメリットだが、わざわざ窓口に出向かなくて済むのは便利。
●日本人経営の代理店や日本人保険外交員
日本人の場合、日本語の保険代理店もある。日本人経営が大半で、日本人に向いた保険商品を用意しているので、選ぶことが簡単になる。この点は大きなメリットだ。
こういった日本人向けの保険代理店はネットで検索するか、バンコクなら日本語のフリーペーパー(無料誌)がいくつもあるので、紙面の広告を見て電話してもいい。20年前だとそれこそ詐欺的な代理店もあったが、今はネットでそういったところがすぐにバレる時代で、まともに商売をしていないところは淘汰されるため、安心できるところがほとんどと言っていい。
日系企業駐在員の奥様方の中には保険外交員をやっている人もいる。タイの法令では保険外交員になる条件にタイ国籍者のみという条項がないので、外国人でも正規で保険外交員になれる。そういった人と連絡を取るのもひとつの手。ただ、駐在員奥様外交員だと、夫の帰任で日本帰国ということもあるので、そういうときの引継ぎは大丈夫なのかという不安は正直ある。
前回紹介しているが、日本人には資産運用ができる貯蓄タイプの生命保険や養老保険が人気だ。商品によっては健康診断の提出、労働許可証の提示も必要になるが、それらが不要なものもある。
また、年齢制限がない商品もあるので、たとえば「タイランド・エリート」のメンバーでは定年退職をした高齢者もいるかと思うが、そういった方でも加入できる保険もある。当然、貯蓄型や養老型は満期になれば保険金が支払われるが、あくまでも加入時にタイに滞在していることが重要であって、受け取り時はタイに口座があれば、身柄はタイ国外にあっても問題ない。
●ここだけは契約に慎重になるべき
基本的にどの保険会社も問題はない。保険外交員も優秀で安心感がある。保険商品もタイ政府が保証し、支払い時にトラブルが起こることもそうない。ただひとつだけ、契約をするには注意が必要な場所がある。それは銀行だ。
どの銀行も窓口でなにかしらの手続きをすると、窓口の銀行員から保険商品を勧められるケースがある。そういうときは窓口のカウンターにそれらの商品を紹介する広告などが置いてあるので、キャンペーンとして打ち出しているか、行員にノルマが課せられていて勧めてくるようだ。実はこれが要注意なのだ。
こういうケースでは、銀行自体に保険商品販売の許可が下りていると見られる。しかし、銀行員自身は保険外交員のレクチャーやセミナーを受講しているわけではない。そのため、保険知識に実際は乏しいことが多々ある。大概、銀行においての保険商品紹介はメリットしか話さず、デメリットは教えてくれない。というか、そもそも行員がデメリットの部分を把握していない。
これでどんな問題が起こるかというと、保険商品によってはタイ国籍者のみ適用の商品であったりするのだ。つまり、なにかあって保険適用内と思って申請しても、実は使えないため保険金を支払ってもらえないということになる。その契約書にサインをしているので、あとで文句も言えない。これは日本人在住者の中で被害に遭った人が実際にいる。
銀行員は口座残高や取引履歴が端末で見られるので、それだけを見て漠然と保険を紹介してくるに過ぎない。実は外国人はダメでしたということを知らないまま。もちろん、外国人でも問題ない商品もあるだろうが、そういった不安要素があるので銀行で加入するならばある程度保険知識があるとか、タイ語が読めないといけない。
高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。