第3回「タイでの賃貸物件の探し方」

 エリアと生活スタイルを決めたら、実際に物件を探しに出かけたい。ここでは具体的に物件の探し方を見ていこう。物件探しの方法は主に下記のタイプになる。それぞれのやり方と、メリット・デメリットも紹介していく。

物件の探し方 その1「自分の足で探す」

 まずは自分の足で探す方法だ。住みたいエリアを決めたら、実際にそこに行って、これぞという物件に飛び込んで空室状況を確認する。これで浮かび上がってくるメリット・デメリットは以下の通りだ。

■メリット

・事前にエリア情報を把握しているので馴染みやすい

・歩いて探すことで地域情報も収集できる

・安い物件、掘り出し物的物件がみつかる

 自分で探すとなると自分で情報検索もするし、実際にその目で見ているので間違いがない。どんな探し方にしても内見は必須だが、業者に依頼すると物件だけしか見ないことも多く、近辺の情報収集がしにくい。特にバンコクは雨季の雨で冠水することもあるので、治安だけでなく洪水情報も把握しておきたい。さらに時間帯によっては渋滞の問題があるなど、そのあたりも聞いておくべき。

 自分の足でみつけた物件が思わぬ安さということは多い。直接交渉するので、中間マージンが取られない。そのため、確実に安い物件に巡り合うことができる。

■デメリット

・英語、日本語が通じないことが少なくない

・徒労に終わることもある

・コンドミニアムなどはみつけにくい

 タイ人の生活圏に飛び込んでいくわけなので、タイ語ができないと厳しい。また、利便性の高いエリアはタイ人にも人気で、空きがないことも少なくない。物件によってはウェイティングリストに何十人と名前があって、空いてもリスト上位から声がかかるのですぐに入れない。

 また、タイは外国人を受け入れる際には物件オーナーや管理会社がイミグレーション警察に到着から原則48時間以内に報告をする義務がある。これはコンドミニアムも同様で、以前はほぼ運用されていなかったが、2019年ごろから全土的に厳しくなった。オンライン報告も可能だがシステムが未成熟でとてつもなく難しい。そのため、外国人入居不可にしているケースもある。よって、足で探しても確実に物件がみつかるとは言えない。

 コンドミニアムは分譲であるため、部屋ひとつひとつのオーナーが違う。管理事務所に賃貸のオファーがあればいいが、管理事務所が把握していないこともあるため、空室状況が確認できないことも。ある程度の水準を超える物件は仲介業者に依頼した方がいい。

物件の探し方 その2「仲介業者を介して探す」

 続いて、賃貸不動産仲介業者に依頼するケースだ。人づてで紹介してもらうケースもあるが、よほど信頼関係がない限りはやめておいた方がいい。後述するが、法的に問題があることも少なくない。まずは、仲介業者に依頼した場合のメリットを見ていこう。

■メリット

・条件を挙げるだけで適切な物件を紹介してくれる

・紹介料がかからない

・業者の競争で様々な特典がつく

・日本語で利用できる

 あくまでも日本人向けの、日本人経営で、日本人従業員が常駐する賃貸不動産仲介業者になるが、日本語で利用できる点はありがたい。初めての移住で右も左もわからなければなおさらいい。

依頼に際して列挙するべき条件は連載第1回目で紹介したので省くが、もし『タイランド・エリート』での移住・長期滞在であれば、それも伝えた方がいい。タイランド・エリートの特典に空港リムジン送迎、健康診断などがあるので、それを利用しやすい物件を紹介してもらうべきだからだ。

 バンコクには日本人向けだけでも複数の仲介業者がいる。そのため各社で競争が起こり、各種特典を用意しているところも少なくない。たとえば、Wi-Fiや有料チャンネルの料金割引、引っ越し費用の負担、さらには各種手続きの補助などがある。

 さらに、日本と商習慣が違うため、仲介業者を利用しても一切費用がかからない点は大きい。日本でいう敷金はタイでは保証金になり、しかも転出時にほとんどが返ってくる。さらに、タイには東京などで見られる礼金がなく、逆に不動産オーナーが仲介業者に紹介の謝礼として既定の家賃額を支払う(1ヶ月分とか3ヶ月分など)。仲介業者の利益はここにあるので、賃借人は一切費用がかからない。これも大きな魅力だ。

■デメリット

・ある一定の水準以上の物件しかない

・仲介業者選びに失敗したらおしまい

・仲介業者は基本不親切

 紹介料が不動産オーナーからの支払いなので安い物件は割に合わないため、5万バーツ前後の物件しか取り扱っていない業者が多いのが実情だ。稀に3万バーツ台もあるが、それより下はほぼない。日系企業駐在員は会社補助が出ることが多く、そのため仲介業者の一番の顧客になり、個人で暮らす物件を探している場合にはちょっと高めの設定になる。

 そんな仲介業者が無数にあり、サービスも取り扱い物件内容もピンキリ。個人が勝手に法人を名乗り、法令関連にもまったく無知なケースもあるし、ちゃんとした体制で仲介業を行うところまで様々。だから、業者選びに失敗したら、いい物件に出会うことはほぼない。

業者選びのコツは、バンコクにある無料の日本語情報誌などに大きな広告を出している大手のようなところにすることだ。個人の場合、広告を打つと労働許可関係でのちのちトラブルになるので、大きな広告は出せないからだ。

 タイにおいて不動産仲介はあくまでも仲介業であることを忘れてはならない。基本的には仲介業者は紹介するまでが仕事。賃借人が契約をするのはあくまでも物件オーナーなので、入居後にトラブルがあっても本来仲介業者にとっては管轄外なのである。だから、入居後のトラブルは自分で解決する必要がある。このため、近年は1棟を一括管理しているサービスアパートが人気になってきている。クレームはすべて受付で言えばいいだけだからだ。

 ただ、仲介業者の競争もあって、最近はアフターケアもしっかりする仲介業者も出てきている。これもやはりマンパワーがある大手ならではなので、広告などで探すといい。

契約書で確認しておきたい項目

 賃貸物件が決まったら、いよいよ契約だ。個人でも仲介業者経由でも、原則的には下記の書類があればいい。

・パスポート(場合によってはコピーも)

・手付金

 仲介業者経由だと勤め先の名刺を要求されることもあるし、法人契約の場合は担当者が同席しないといけないケースもある。

 いずれにしても書類は簡単だ。契約書は安アパートの場合はタイ語しかない、あるいは契約書そのものがない場合も。外国人向けに開放しているところは英語の書類も用意されている。タイでは印鑑は不要なので、書類を確認したらサインをすればOKだ。

 多くが手付金として保証金の一部を支払って仮押さえとなる。そして、入居日までに保証金の残りと最初の家賃(不要の場合もある)を納め、入居できるようになる。

 日本人の場合、契約書の内容を確認することが面倒に感じる人もいるかもしれない。しかし、タイはよき国ではあるが、外国でもある。互いに同国人でないことから契約を書面で交わすことは大切だ。しっかりと目を通しておきたいところ。

 とはいえ、すべてを読み切れない場合は次の点だけでも確認しておくといい。

・契約期間

・契約金額(家賃と保証金の額)

・保証金返還条件

・家賃支払い期日

 いつからいつまで住むことができるか。家賃と保証金はいくらとなるか。毎月何日に家賃をどう払うのか。このあたりを確認しておきたい。

 保証金が返ってくる条件も、多くが最低半年か1年の設定。それ未満で退去すると保証金は一切返ってこないといった契約になっていることだろう。いつまでに退去を宣言しないといけないのか、そのあたりを確認しておけばスムーズに引っ越しができるようになる。

 ちなみに、日本や外国に引っ越す場合は輸送会社に相談しないといけないが、タイ国内、特にバンコクからバンコクといった近場の場合、引っ越し業者の見つけ方もまた簡単である。それは、近所のバイクタクシーに相談することだ。あるいは、住まいの門番をする守衛に訊く。大概、彼らの交友関係にピックアップトラックを所有している人がいて、引っ越しを手伝いに来てくれる。格安なのでおすすめの探し方でもある。

筆者紹介

高田胤臣(たかだたねおみ)1977年東京都出身。1998年に初訪タイ、2000年に1年間のタイ語留学を経て2002年からタイ在住。2006年にタイ人女性と結婚。妻・子どもたちは日本語ができないため、家庭内言語はタイ語。
現地採用としてバンコクで働き、2011年からライター専業になる。『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)など書籍、電子書籍を多数出版。書籍、雑誌、ニュースサイトなどに東南アジア関連の記事を寄稿中。

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